社会学部社会学科の本多真隆准教授にインタビュー

2024/04/11

教員

OVERVIEW

社会学部社会学科の本多真隆准教授に、担当教科やゼミについて語っていただきました。

自分の興味関心から社会で生きる足場を定める。家族を紐解く「社会学」

家族の問題を歴史的、構造的に考える「家族社会学」

担当教科の「家族社会学」では、家族と社会は密接に関係している、両者のあり方は時代とともに変化する、ということをみていきます。たとえば少子高齢化や未婚化、家族の多様化といったものですね。私は家族社会学のほかに歴史社会学も専門としているので、講義では、現在の家族をとりまく状況がどのようにできあがってきたのか、その歴史的経緯についても話します。

その際、今の常識をなるべく相対化できるような資料や映像、統計データなどを使います。たとえば、かつての日本では、恋愛結婚より当事者以外の人が口出しする、お見合い結婚のほうが夫婦関係はうまくいくといわれていたり、人口増加が社会問題になっていました。また、女性が欧米先進諸国よりもよく働いていました。

家族のかたちでいえば、立教大学の学生たちの多くは会社員と専業主婦が標準タイプ、と思うかもしれません。かつては農業・漁業など第1次産業や、2次・3次下請けの製造業に従事する共働き家族が多かったり、家に仕える奉公人(非血縁者)などが「家族」に含まれていたり、愛人と奥さんが同居するなど、ギョッとするような「家族」も存在しました。

これらは何も遠い昔の話ではなく、つい100年前から昭和期くらいまでの話です。それがどのようにして現在のような、男女の恋愛結婚による「家族」が「当たり前」とみなされるようになったのか。核家族化が進行し、血縁関係の「家族」に閉じられていったのか。また女性の社会進出が問題として語られるようになっていったのかを考えるわけです。

多様な生き方ができる社会をつくるための学び

資料を見ていくと、社会の変化よって「家族」は大きくそのあり方を変えていることがわかります。家族を通して社会を、また社会を通して家族について考えることが、家族社会学の基本線です。「家族」というと、プライベートで小さなことと思われがちですが、個人的なことが、いかに大きな社会的なことに連なっているかをみていきます。

そして現在の家族のあり方を相対化すると、今後の家族や親密な関係、またケア関係のあり方はどのようになるのかなど、問いも広がっていきます。講義では、性的少数者(LGBTQ)のパートナー関係を公的に認めるパートナーシップ制度や同性婚、夫婦別姓問題や、家族を超えた扶け合いなどのトピックも扱い、今後の共同生活はどのようになるのか、あるいは社会はそれらをどのように包摂していくべきかということについても考えます。多様な生き方ができる社会をつくるにはどうすればよいか、という問いでもありますね。

個人研究は、社会で生きるための自分の足場を固める時間

担当ゼミのテーマは「家族と親密な関係の社会学」です。文献講読とディスカッション、個人研究の報告という、比較的オーソドックスなスタイルのゼミです。結婚、子育て、介護から少子化、未婚化、子育て支援、恋愛、マッチングアプリの流行、同性婚、パートナーシップ制度、福祉政策など、「家族」をベースとしつつ、その枠を超えた現象まで幅広く扱います。

卒論を見据えた個人研究ですが、ここで学術的なルールに則りながら、自分のテーマや研究を、それまでの研究の流れのなかに、そして社会に位置づけてもらいます。研究は、社会について知る時間でもありますが、自己探求の時間でもあります。

研究における作業は、テーマに関する対象者へのインタビュー調査、歴史資料、政策資料を調べたりするなど、質的な手法によるものが多いです。その過程では、ゼミで定期的に報告してもらい、メンバー間でディスカッションも行います。

自分の研究をどのように他者に伝えればよいのか、自分の伝え方は他者にどう受け止められるのか、こうした学びが研究を深めます。もちろん、どのような文献にアクセスすればよいか、得られたデータをどのようにまとめればよいのかなど、私自身の経験からできる限りアドバイスし、サポートします。

卒論においては、研究の前に抱いていた仮説や思い込みがうまく当てはまらない場面に遭遇したときが勝負だと思います。こうしたときに、どう計画を練り直し、どう軌道修正するのか、これが研究のレベルを上げ、また自分を他者に開いていく機会になります。なぜ自分はそのような思い込みを抱いていたのか。いろいろ考え直す過程で、自分と社会についての理解が深まりますし、またこのような経験が自分の足場を作っていくわけです。

うまくいかない場面に遭遇しても、再構築できる強さのようなものを体得した学生は、ひとまわり大きく成長を遂げます。卒業論文は大学の学びの集大成ですし、学術的にも価値があるものを目指して欲しいですが、多くの学生にはまず、自分が研究を行う過程で変化したり、社会に出るための足場を固めたりするような経験をして欲しいと思っています。

言葉にできない「もやもや」「不安」を、マクロな視点から捉える「社会学」

立教大学社会学部は、ひとことでいえば社会学を「広く深く」学べる場所です。教員の人数も多く、またそれぞれの専門領域も幅広いです。社会学は扱う範囲が広いので、さまざまな専門領域の先生がいることは、それだけで大きな強みになります。社会学を専門的に学ぶうえでは国内有数の環境でしょう。

さらに立教大学には、国内外からさまざまなバックグラウンドをもった学生が集います。つまり、自分とは異なる「他者」と出会う機会も豊富です。社会学の学びの基本は、他者について理解し、そして自分のことを理解することにあると思います。大学に入ったら、ぜひいろいろな人と関わったり、色々な場所に出かけたりして欲しいです。もちろんじっくり本を読むなど、自己探求に時間を割くこともよいと思います。

池袋という街も社会学を学ぶ上では魅力的ですね。住宅街や百貨店といったひと昔まえからの中間層的な文化もあれば、外国人も多く、エスニックな文化に触れる機会も多いです。またアニメや漫画といったサブカルチャーの発信場所でもあります。もちろん東京にいるだけでは日本社会全体のことはみえてきませんが、社会を知るためのきっかけを掴む機会が多い街だと思います。


社会学部の教員としては、まずは社会学に興味がある学生を歓迎しています。何らかの社会問題に関心がある方は、社会学部に入ったあとも学ぶきっかけを掴みやすいでしょう。そのうえでいうと、言葉にうまくできない生きづらさや、社会や身の回りのことについて「もやもや」「不安」を抱えている人にも、社会学部はおすすめできます。

そもそも社会学がなぜ発生したのかというと、既存の学問体系、つまり法学や経済学などでは説明がしにくい、人びとの「関係」のあり方を捉えるために生まれた学問という側面があります。たとえば「なぜ、わざわざ学校に行くのか」、「なぜ、家族をつくるのか」といったことです。こうしたみなさんの「当たり前」も、社会学を学べば少しも当たり前でないことに気づくはずです。「当たり前」でないことを知ることは、それ以外のさまざまな可能性を知り、未来を構想することにもつながります。

さらにいえば、社会学をぜひ活用してほしいと思います。自分の「もやもや」や「不安」を表現したり、探求したりする際に、社会学はひとつのツールになると思います。また現代社会の多様性についてデータや調査で理解したり、それをゼミなどで発信したりすることは、ビジネスの現場などにも応用がきくでしょう。

自分を取りまく環境をマクロに捉えると、自分がどのように振る舞えばいいのかを知ることにもなります。社会のなかでの自分の足場を定めることができるよう、社会学部でさまざまな学びにチャレンジしてください。

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