社会学部社会学科の三輪哲教授にインタビュー

2026/04/07

教員

OVERVIEW

社会学部社会学科の三輪哲教授に、担当教科やゼミについて語っていただきました。

自由自在にデータを操り、世界のどこにもない新たな知を拓く

数字を手がかりとして社会の変化を感じる

データ分析や統計学は、経済や心理、工学や理学の分野などでも広く使われています。社会学では社会調査により得られたデータを用い、人間が集まることによって、複数の人間がいるからこそあらわれてくるような、複雑な分断、あるいは統合といった社会の動きをつかむことができます。

私が授業を担当する「データ分析法」では、汎用的な表計算ソフトExcelを用いて、さまざまな種類のデータの基本的な分析法を講義するとともに、コンピュータ実習の指導をしています。Excelはこれだけ普及していますから必須のスキルです。社会に出たときにも使い方を覚えておくと役に立ちます。それ以上専門的な分析ソフトのSPSSやPythonも使いますが、ソフトウェアや言語が問題ではなく、大事なのは扱っているデータの意味するところは何かということです。

一見すると数字の羅列に過ぎないデータは、人間がアンケートで丸をつけて回答したり、役所に行って届け出た書類など、さまざまな行為を集積して数字化したものです。それは人間の意思や、葛藤などがあらわされたものです。これらは、大量の文章(テキスト)データから有益な情報を取り出すテキストマイニングなどによって集められたものでもあり、結局もとはアナログですよね。以前は、文章は文章、会話は会話として分析するしかなかったのですが、今ではそれさえも数量化したり、ビジュアライゼーションといって視覚化することができます。最近ではAIの利活用が顕著で、技術は進化を続けています。しかし重要なことは、データにあらわれるさまざまな数字の動き、グラフの形の在りようの本質は、社会や人間関係や組織内の力関係、国家間の関係までをあらわしているということです。数字をカギとして社会の変化が見えたり、匂いを感じとることができるということです。

「多変量解析」のほうでは、専門的な統計分析ソフトSPSSを用います。SPSSは多変量解析を実行するためのソフトウェアの一種で、もっとも操作が簡単で、学部生にも向いており世界的に広まっているツールです。質問紙調査により得られた社会調査データの、より高度な分析法の修得を目指し、学術論文執筆における実践的な技能を高めることに重点を置いています。

「格差と移動」を入り口に社会学的な問いを探る計量社会学

一方でゼミのテーマは「格差と移動の計量社会学」です。計量社会学とは、社会調査で得られたデータを用いた計量分析に基づき、社会学的な問いを探る学問です。「格差と移動」の「格差」とは貧富の差や、性別による投票権の有無など、社会的な地位や権限のギャップのことをいいます。そして「移動」と聞くと、池袋から新宿に移りますという地理的移動なのかと思うかもしれませんが、ここでは社会移動をさします。例えば、平社員が課長に出世する、医者の子どもが医者以外の仕事に就く、結婚による独立、広く言えば進学、就職、転職も含まれうるのですが、社会的地位や立場が移り変わる「移動」のことです。これが私の研究テーマの中核です。

多変量解析の授業を受ければ、コンピュータ使って数字をはじき出すことはできます。さらに、社会調査法の授業でアンケートの作り方や集め方を習得します。あとは、社会学理論で考え方を理解します。そのように勉強していくわけですが、いざ、それらを利活用して自分の関心あるテーマを研究するとき、どの理論をあてはめ、どういったデータを集めてどのように組み合わせ、分析を行えば論文ができるか、この一連の過程は大いに訓練が必要となります。ゼミではこれを、私の専門領域である「格差(社会階層)」を入口として教えています。ゼミ論、先行研究の検討を経て4年次からは完全に独自のテーマ設定や研究計画のもとで、卒業論文に挑んでもらいます。

統計分析が必須のゼミなので、最後は統計の技術で処理することが答えの出し方になります。そうすると格差と違いを発見して、数量化しやすいのです。格差や移動を切り口にしているのはそのような理由です。コンピュータ操作に問題がなければ初心者でもできます。計量と聞くと、どうしても数学のイメージが強く敬遠されがちです。ところが、やってみたら楽しく、自由自在にデータを操ることで、世界のどこにもない新たな知を拓くことができることもあります。ゼミに入った当初は、授業を休みがちだった学生が、そうした成功体験を積み重ねて大学院に進学し、さらに成長して研究者になるような過程に寄り添えたのは、非常に印象的でした。

結果の違いをどのように見るのか。そこに新しい価値を見出してほしい

学生たちがデータ分析を行ったとき、本や論文に書いている結果と違う結果が出ることもあります。そのようなとき学生は悩み、自分が得た結果をなかったことにしてしまうことがあります。しかし、その違いにこそ価値があると思います。私はそれを「世界のどこにもない研究」と呼んでいます。

昔の大先生と呼ばれる人たちの論文だって、現代の水準からみたらもう30年も前の、分析方法が古いものだったりします。データも分析方法も新しくなりますし、学生が今まさに最新の環境にいるということは有利なことなのです。ですから、昔とは違う結果が出たらといって、それが間違っているとは限りません。むしろ私は「君らが今やっていることは、誰もやっていないこと。価値があるよ」と言いたいですね。自信と自尊心を持ってもらいたいです。ゼミでは、今までの社会学との蓄積と違う結果が出たら「自分の研究のほうが優れていると思う要素を探してみよう」「新たな発見を見抜く目を養おう」と言って指導しています。それが新しい知見であり、新しい世界観の入り口に立ったということです。社会学は常識を疑って、社会の見えない部分を探るのが学問の特徴なので、ぜひ新しい世界を探ってほしいですね。

立教大学のポテンシャルが高い恵まれた環境を実感して、使い倒してほしい

立教大学は、魅力的な学びの場だと強く思います。池袋のキャンパスはコンパクトにまとまっているので非常に効率よく移動し、活動することができます。立派な図書館や、コンピュータの利用環境も非常によいです。8号館にメディアセンターが管轄するコンピュータ室がありますが、コンピュータ自体は数年に1度は入れ替えており、大教室には台数がそろっています。そして、ソフトウェアが充実しています。統計分析ソフトのSPSSのライセンス料は意外と高く、大学の中にはそれが高額なので導入をあきらめたり、フリーのソフトに乗り換えたりしている大学もあります。しかし、立教大学ではそれを、追加的なソフトまで含め、学生もインストールして自身のパソコンで使うことができます。他大学の教授陣とほぼ同じ条件のもとで使えているというわけです。電子的なジャーナルへのアクセスなども含めて、立教生たちはこのポテンシャルが高い恵まれた環境を実感して、使い倒してほしいですね。

そして何より、授業の種類が豊富です。各学部の専門科目、全学共通カリキュラムなど、本当に多くの科目から自由に授業を選択でき、自分の学びたいことに出会いやすい環境です。伝統的な社会学だけでなく、隣接する諸分野、さらにはソーシャルデータサイエンスや国際社会コースなどの科目まで拡げれば、多様な関心に存分に応えられるカリキュラムになっています。目的意識が明確であれば、それにふさわしい学びをするための学科が、すぐにも見つかることでしょう。まだ目的意識が明確でなくても心配ありません。ここでは、いろいろな人たちと出会うことで刺激を受けて、自らの意識が徐々にはっきりしていくのではないかと思います。

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