社会学部メディア社会学科の井川充雄教授にインタビュー

2026/04/13

教員

OVERVIEW

社会学部メディア社会学科の井川充雄教授に、担当教科やゼミについて語っていただきました。

メディアを道具として利用し、自分のため社会のためにどう使うのかを学ぶ

メディアの歴史と時代ごとの役割の変化が大切な視点

メディア社会学科の学生が1年次に履修する「メディア社会学」は、社会学科、現代文化学科の学生も低学年で履修することの多い科目です。そもそも、メディア社会学とはどのような範囲を扱うのかや、メディアはどのような役割を担っているのか。あるいは、人々にどのような影響をおよぼしているのかなど、メディアと社会、コミュニケーションとのかかわり合いについての基礎や諸理論を学ぶ授業です。

例えばトランプ政権は、実はナショナリズムとメディアが強く結びついて誕生しました。授業では、事件や事象そのものを解説するのではなく、メディアと社会のつながりが体感できる事例を、最新の情報も交えながらとり上げ、わかりやすく説明しています。

私の専門領域である「メディア文化史」をテーマにしたゼミでは、メディアが作り上げてきた文化の歴史を学びます。メディアを通して歴史全体の大きなうねりや変化を解き明かしていく学問です。そもそもメディアの歴史といっても、それほど古いわけではありません。新聞は2世紀以上の歴史がありますが、ラジオ放送は1925年に始まりました。ですから放送100年、テレビは80年の歴史です。ウィンドウズの発売が1995年ですからインターネットは30年。短いながらも、そこに歴史はあります。

私の研究は戦争とメディアについて、戦後のアメリカGHQによって占領されていた時期の新聞からスタートしました。戦後の日本において、新聞やテレビといったマス・メディアは、人々の社会認識や世論形成に大きな影響力を持ってきました。テレビは、戦後最大の娯楽メディアに成長する一方で、テレビ・マンガ・音楽・広告などがそれぞれに関連し合いながら、全体としてポピュラー・カルチャーを開花させてきました。近年では、インターネットやSNSが急速に普及し、メディア社会は大きく変貌を遂げています。「テレビ離れ」とも言われていますが、人々がまったく見なくなったわけではないですし、テレビ番組をスマホで見ることもできるようになりました。

ラジオも重要なメディアのひとつですが、現在では少しマイナーになりました。それでも災害時に活躍したり、コアなリスナーがいたり。あるいは、高齢者にとっての大切なメディアになっていたりもします。また、今ではポッドキャストなどの音声配信が広がり、世界中の音声を聞ける時代になりました。そういった、時代ごとの役割の変化が大切な視点です。

グループでの調査研究を行うゼミの活動

ゼミでは、グループでの調査研究を主としています。ゼミ生の方々には、現代のメディアの中で興味や関心のあることを研究してもらって、その中に歴史的な視点を入れていくということになります。テーマが決まったら関連する文献を読んだり、データ収集を行い、何度かの発表を経て報告書にまとめていきます。

グループ研究は1つ5~6人ずつ、3つのグループに分けてとり組んでいます。2025年度の1グループはテレビCMにおけるジェンダー表現がテーマです。飲み物を対象に、ビールの場合は男性のイメージが強いので、CMに登場するのは男性の俳優さんが多いとか、紅茶だったら女性タレントの起用が多いなど、丁寧に検証していました。

ふたつ目のグループは、Vlog(ブイログ)がテーマです。Vlogとは 、Video(動画)とBlog(ブログ)を組み合わせた言葉で、動画形式で発信するブログの一種です。今、メディアの進化は急速で、私はVlogのことをほとんど知りませんでした。ですから私のほうが学生たちに教えてもらうことも多いですね。新しいメディアに飛びつくのは若者層です。私たちの世代では、なかなかすぐにキャッチアップできなくなってくるので、今これがおもしろい、これに興味があると教えてくれると、こちらも刺激を受けますね。しかし、どのような新しいメディアにも落とし穴があります。そこは、使いながら学んでいかなければなりませんね。そして、3つ目のグループは、2025年の4月から10月にかけて開催された大阪・関西万博のメディア広報戦略の研究でした。これも今しかできないテーマです。

瞬発的な反応を繰り返すSNSにおける「感情」の問題

今メディア論の中心は「感情」という問題です。かつては、相手を論理で説得することに重きを置いていました。しかし今は、感情を揺さぶってその人を動かすことが注目されています。インターネットにおける動画を見て即座に反応して「けしからん!」「かわいい!」と強烈に感情を動かされる傾向があり、しかも短時間にその反応を繰り返す、というのがメディアの大きな変化だと思います。ダイレクトに刺激を受け、咀嚼しないままに反応してしまう。瞬発的に考える間もなく、即座にいろいろなことをあらわさなくてはならず、好きか嫌いか、おもしろいかつまらないか、のように反射的になってきているような気がします。じっくりとある1冊の本を読み、1年くらいたって、ジワジワと意味が分かってくるような体験が減っていると思いますね。

未知の分野や興味のなかった分野との新たな出会いを楽しんでほしい

卒論のテーマはいつも「自分が本当に興味を持てたもの、どうしても解明したいテーマを選んでください」と指導しています。そのため内容はとても多彩で、こちらが面食らうものも多いですが、そこから私も多くのことを学んでいます。ひとつ例をあげるとすれば、かなり以前になりますが「ヤンキーに共感する若者たち—なぜアイドルの握手会で特攻服を着るのか—」というタイトルの卒論を書いた学生がいました。その学生は、特攻服を着てアイドルに会いに行く若者に直接会って話を聞いたり、特攻服の販売店に取材に行ったりして、若者文化の一端を明らかにしました。特攻服を着る若者たちを「くだらない」と下に見てしまっては、学問になりません。周りからどう思われたとしても、自身の研究を突き詰めてほしいですね。

立教の学生は多くのことに関心を持ち、また自分のやりたいことが実現できるチャンスに恵まれていると思います。常識や当たり前、周りの空気にとらわれていては新しい発想は生まれません。ぜひ、自分の殻を破って、自分のやりたいことにチャレンジしてほしいと思います。現状に安住せず、自分自身を新しく作り替えていくという気概を持ってとり組むことが大切だと思います。

なかでも社会学部は、多くの選択肢を提供してくれる場だと思います。留学に行くことも可能ですし、ボランティアや学外の活動に参加することもできます。また立教大学には、全学共通科目も含めていろいろな科目があります。さまざまな分野を研究している専門の教員が多く、規模が大きな大学です。自ら積極的に学び、自分にとって未知の分野や興味のなかった分野との出会いを楽しんでほしいですね。

社会学とは「自分が何者であるかを知ること」だと私は思います。社会が何かを知ることで、自分が何者かを知る。家族や労働などテーマはたくさんあり、それが自分の立ち位置を学ぶことにもつながり、この先、長く生きていく人生の中で武器になる学問だと思いますね。幅広い項目、テーマから気になることを見つけることが第一歩だと思います。それが将来の自分をつくっていくのだと思います。そしてさらに言うと「メディア」とは、ひとつの道具にしかすぎません。それを使って社会の中で何ができるかを学ぶことが大切です。メディアをいかに利用し、自分のため社会のためにどう使うのかを4年間を通して学んでください。

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