メディア社会学科、木村 忠正 教授に聞く、10の質問

2016/05/01

教員

Q.1 今までの経歴を教えてください。

私はもともと、文化人類学の中でも認知人類学という分野に興味が あり、その分野の第一人者であったフレーク(Frake)先生を慕って、ニューヨーク州立大学バッファロー校に留学しました。帰国後(1993年)、当時文系では珍しいインターネット研究の大学研究所にたまたま出入りするようになり、インターネットという新たなメディアが、人の認知、コミュニケーション、行動を大きく変える可能性に魅せられました。文化人類学ではアマゾンなど辺境をフィールドとすることが多いですが、私は人類の新しい活動領域であるサイバースペースをフィールドに研究をしたいと思ったのです。その後、早稲田大学や東京大学での研究教育を経て、2015年立教大学の一員に加わりました。

Q.2 学生時代はどんな学生でしたか?

演劇が好きな学生でした。3年生の時には、大学のサークル活動ではなく、俳優養成所のようなところに入って、演劇の基礎を学びました。ただ、プロになる気は(素質も)なくて、人間の行動や社会のあり方を演劇のモデルを介して理解しようという気持ちがあったのかもしれません。

Q.3 専門の研究領域について教えてください。

幼いころからコンピュータゲーム、携帯電話、ネットなどが情報メディア環境にあるデジタルネイティブと呼ばれる世代(およそ1980年生まれ以降)についての多角的研究が中心です。また、高齢者などがネットワークの拡大に取り残されてしまうことで不利益を被るといった「デジタルデバイド」も研究テーマです。

Q.4 担当している授業の内容について教えてください。

一つは「メディア・コミュニケーション論」というもので、これは、グーテンベルクの印刷機から、デジタルネイティブたちのソーシャルメディア利用までを扱う授業です。立教大学のみなさんは私の研究対象でもあり、どのように多様なSNSを活用しているかなどを聞きながら、教える内容も年々更新していきます。もう一つは、「webスタディーズ」という授業ですが、こちらではデジタルデバイドや人工知能がもたらす問題など、社会全体のマクロな変化について講義を行っています。

Q.5 担当しているゼミの内容について教えてください。

私のゼミでは、「Be a Knowledge Professional(知の専門家であれ!)」がモットーです。さまざまなテクノロジーが発展していくなかで、情報ネットワークの海から、自らデータを集めて、分析し、思考するスキルを身につけ、実践することを介して、自分を高めたり、新たな付加価値を生み出すことを目指しています。

Q.6 ゼミを通して学生に伝えたいことは何ですか?

実は、世界全体で見ると、すでに人口の6割近くがデジタルネイティブです。アメリカや中国といった大国も、5割がその世代なんですね。ところが、日本ではデジタルネイティブが3分の1しかいない。世界の人口の中央値が30歳に対して、日本社会は47歳と、少子高齢化の進展でデジタルネイティブが力を発揮しにくい状況なのです。ですから、学生のみなさんには、情報ネットワークとの付き合い方を学ぶなかで、自分自身をグローバルに活かす視野を持ってもらいたいですね。

Q.7 社会学の魅力は何ですか?

社会学というのは、とりわけ近代以降の社会を対象とする学問ですが、その近代社会を構成する政治、経済、制度、都市、文化、テクノロジー、ヒト、心理など、多様な要素を統合的、複合的に扱えるということが、この学問が持つ一番大きな力なのではないかなと思います。

Q.8 どのような学生が社会学部により合っていると思いますか?

経営がやりたい、心理がやりたいなど、自分の関心がはっきりしている人は、その分野に進むのがいいと思います。一方で、経済的な面、政治的な面、心理的な面など、複数の領域に知的好奇心が持てるという人が社会学には適しているのではないでしょうか。

Q.9 学生におすすめしたい本を教えてください。

今の世相も鑑みて、『戦争プロパガンダ10の法則』(Anne Morelli著)という本をおすすめしたいと思います。この本は、もともとはポンソンビー卿が、第一次大戦時の戦争プロパガンダを具体的資料にもとづき跡づけた議論を、10の法則に体系化し、近年の湾岸戦争やコソボ爆撃なども事例として、為政者がどのようなレトリックで戦争を正当化するのかを解き明かしている本です。

Q.10 最後に高校生へのメッセージをお願いします。

冷戦構造の崩壊後、個人がより自由になる社会になってきました。そこには、いい面もあれば、逆にリスクも個人で背負わなければいけなくなったという側面もあります。大学生活というのは、そういった世の中の変化を理解して、社会に出て活躍できるための思考力や考え方の枠組みを学び、自らを鍛え、高めるための大切な時期です。そうした意識を持って大学に入学してもらえたらなと思います。

CATEGORY

このカテゴリの他の記事を見る