社会学科、李 旼珍 教授に聞く、10の質問

2018/05/01

教員

Q.1 今までの経歴を教えてください。

韓国の梨花女子大学で社会学を専攻し、延世大学で修士号を取って、政府の研究機関に就職。東京大学社会学研究科で研究生として一年間の留学生活をした後、修士課程に入学して修士号を取り、1998年に博士号を取りました。その後、日本労働研究機構(現 JILPT)に勤め、1999年から新潟大学経済学部で教え、2001年に立教大学に来ました。

Q.2 どんな学生でしたか?

もともとは、英文学科に入ろうと思って大学に入学したのですが、社会問題にも興味があったので社会学入門をとりました。その授業というのが、まさに目から鱗という感じで、社会の構造や社会の矛盾といったことがいろいろ見えてきて、大学3年生から本格的に社会学を学ぶようになりました。また、学問以外ではパンソリという韓国の伝統音楽のサークルに所属して、発表会などもしていましたね。

Q.3 専門の研究領域について教えてください。

私の専門は労働社会学です。労働者が自分たちの権利を守るための労働組合ですとか、企業と労働者との労使関係などを扱っています。最近は、非正規労働者も増えるなど働き方が多様化している中で、地域をベースに労働組合がつくられるなど、労働組合自体のあり方も変わってきました。ですから、これまでの労働組合に関する研究というのは職場に基盤が置かれていたのですが、現在は地域コミュニティーをベースとした労働運動なども研究の対象としています。

Q.4 担当している授業の内容について教えてください。

授業としても長いこと「労働社会学」について教えていますが、やはり社会の変化に合わせて、労働の仕方、労働者の権利の守り方というものも変わってきますので、講義の内容も時代ごとに調整しています。ワーク・ライフ・バランスの問題なども最近の大きなテーマですので、日本はもちろん、アメリカやイギリス、そして韓国の事例などを交えて議論を紹介したりもします。

Q.5 担当しているゼミの内容について教えてください。

労働社会学の分野の中で、学生が興味のあることについて調べてもらっています。私のゼミでは個人研究が基本となるので、学生たちが取り扱うテーマもさまざまです。コワーキングプレイスをテーマにする人、職人の跡取り問題を調査する人、あるいは、マタニティハラスメントについて調べる人。それぞれが興味のあることに対して、インタビュー調査などを行い、その結果を発表し、ゼミ報告書としてまとめています。

Q.6 ゼミを通して学生に伝えたいことは何ですか?

やはり社会学科の学生であれば、もう少しニュースや新聞、あるいは先行研究等を見て、企業の動きなどに敏感になってほしいと思いますね。先ほどのライフ・ワーク・バランスの話にしても、今、いろいろと新しい制度を取り入れる企業も増えてきていますし、ブラックな労働条件から自分を守る手段としても、そういったことをきちんと知ってほしい。それが、実際に働き出して何か理不尽なことに遭遇したときに、企業の中できちんと声を上げて、労働環境を改善していくということにもつながりますからね。

Q.7 社会学の魅力は何ですか?

社会というものが政治や経済と絡み合って、どのように成り立っているのかがきちんとわかること。そしてさらに、単に表面的な制度の話だけでなく、その中で生きている人々の意識というものまで理解できるようになることが、社会学の魅力だと思います。

Q.8 どのような学生が社会学部により合っていると思いますか?

誰でも社会学部に入って学ぶことができるし、社会に対する多様な見方ができると思っているので正解がないですね。ただ、好奇心が強く、社会で起きていることに幅広く興味を持てる人は、社会学部に向いていると言えるかもしれません。

Q.9 学生におすすめしたい本を教えてください。

現代というのは、人文学の教養がより求められている時代なのかなと思い、マイケル・サンデルの本をおすすめしたいと思います。具体的には、数年前に話題になった『これからの「正義」の話をしよう』ですね。今の時代、何か一つの問題が起きたときに、それを経済的な側面から見るか、あるいは道徳的な側面から見るかで、導かれる答えというのは変わると思うのですが、そういった多様な見方があるということを知ることができ、かつ難しくなく読みやすいのがサンデルの本かなと思います。

Q.10 最後に高校生へのメッセージをお願いします。

大学生でもディベートが得意でない人が多いのですが、高校生のみなさんにはぜひ、自分の意見をしっかりと発言するという習慣を身につけてほしいですね。人と積極的に意見をぶつけ合い、議論を交わす。そういった訓練を早くから始めると、より大学での学びが有意義なものになると思いますよ。

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