現代文化学科、 小泉 元宏准教授に聞く、10の質問

2018/05/01

教員

Q.1 今までの経歴を教えてください。

高校を卒業してから二年間、いろいろな仕事をしながら各地を転々と していました。その中で学ぶことの重要性を感じ、また、音楽や芸術、 言語などを幅広く学びたいという思いもあり、総合的に学べるリベラ ルアーツ系の大学として、国際基督教大学(ICU)に入学。その後、東京 藝術大学の大学院へと進みました。修士時代に就職活動を終えて就 職するつもりが、勢いで博士課程まで進学してしまい、ロンドン芸術 大学、ロンドン大学、大阪大学、鳥取大学での研究・教育を経て、2016 年に立教大学にやってきました。

Q.2 どんな学生でしたか?

学生時代は毎年、国際交流のための奨学金やアルバイト代を資金に世 界各国を回っていましたね。また、幼い頃から、吹奏楽、管弦楽、バンド など音楽活動もつづけていました。指揮者や音楽指導、講評・審査など は、現在でも行っています。音楽活動をつづけるために研究をし始め たと言ってもいいかもしれません。その後、徐々に音楽でのアンサン ブルづくりと社会形成のつながりに興味を持つようになり、それが社 会学に関心を向けるきっかけにもなりました。

Q.3 専門の研究領域について教えてください。

芸術社会学・文化社会学、文化政策研究、そしてビジュアル社会学と いう、三つを柱に研究を行っています。関心があるのは、人々の関係 形成や社会形成におけるアート(美術、音楽、映像、ダンスなど)の役 割。具体的には、アートプロジェクトと呼ばれる、都市・地域社会の各 所で市民参加を伴いながら行われる文化活動や文化事業、アーティ ストが進める社会活動などです。また、それらの活動を取り巻く政策 や、ビジュアルメディアを通じて社会を読み取ったり、研究を伝えた りする方法論にも関心を持っています。

Q.4 担当している授業の内容について教えてください。

講義科目として代表的なものは「アートの社会学」です。この講義の前 半では、いかに私たちのものの見方や好みが社会の権力や制度の中で 形成されてきたのかを考察します。後半は、アートが社会をいかに変 化させてきたのかをヒントに、私たちがどのようにオルタナティブな (もう1つの、今とは別の)社会を構想し、今の社会を変化させられう るかを検討します。ディスカッションやグループワークを行うと共 に、時にはゲストを招いてのトークなども織り交ぜています。

Q.5 担当しているゼミの内容について教えてください。

ゼミでは、「見えていないものを見る」「聞こえていない声を聞く」た めの社会学的想像力を養うことを重んじています。文献講読やグ ループワーク、プレゼンテーション、フィールドワークなどが主な活 動ですが、国内外のゲストと共に行う授業や活動もあります。また、 芸術祭やアートプロジェクトへ実際に足を運ぶことや合宿なども実 施しています。

Q.6 ゼミを通して学生に伝えたいことは何ですか?

大学生活では、卒業した時に「思った通りの四年間を過ごした」と思ったら失敗です。「思ってもいなかった」ものを見知ることこそが重要。ですから、違うものやオルタナティブを評価する特性を学生には身につけてもらいたいです。そのために、アートを通じて社会を見ることは、大きな助けになります。また「なぜ自分や人々が、それを見過ごしていたのか。どのような社会の考えや力が、それを見ようとさせていないのか」を見出すことも、大切にしてほしいですね。

Q.7 社会学の魅力は何ですか?

第一に、新たなものの見方、特に社会への新たな視点を提示できる研究領域であること。それは、社会における支配的な考えに疑問を持つことを重んじる研究領域であることが大きく関係しています。二つ目として、異なる「生」のあり方に寄り添えること。研究を通して「他者」から見た世界を体験し、「他者」の人生を生きることができる。これは社会学ならではの魅力です。

Q.8 どのような学生が社会学部により合っていると思いますか?

一つに見えていても、実は社会は一つではない。そういった視点から、 さまざまな「社会」や「社会への見方」に興味を持てる人が社会学に向 いていると思います。また、他者の生き方や考え方に関心を持ってい る人にも、おすすめの学問です。

Q.9 学生におすすめしたい本を教えてください。

ロンドン大学ゴールドスミス校のレス・バック教授によって書かれた 『耳を傾ける技術』という本は、多文化化する社会を、グローバル社会 学、あるいはビジュアル社会学を通じて考えるための良書だと思いま す。今の時代における社会学の役割の一つを考える手掛かりとして、 ぜひ手に取ってもらいたいですね。

Q.10 最後に高校生へのメッセージをお願いします。

かつての権威が崩壊しつつある現代において、「大学名」で大学を選ぶ 必要はなくなっています。面白いと思う先生や研究で大学を選んでく ださい。また、大学に行くことや今見えている世界、それらだけがすべ てとならないような社会の見方を持ちつづけてください。

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