現代文化学科、 石井 香世子准教授に聞く、10の質問

2017/05/01

教員

Q.1 今までの経歴を教えてください。

私は子どもの頃ずっと、パイロットになるのが夢だったんです。高校生くらいまでは、単純に大空を飛び回って、世界中の街に友だちをつくりたいと思っていて。それで中学校の終わりくらいから英語を勉 強するために英語圏に短期と長期の留学をするようになったのです が、そこで気がついたのは、単に飛行機を運転できて、英語が話せた としても、それだけでは世界のいろいろなところに住んでいる人と わかり合うことはできないということだったんですね。その壁にぶ つかったのがちょうど大学入学直前で、それで大学では異文化理解や民族問題を学ぼうと決めて、気がついたら社会学の先生の元で卒業論文を書き、修士論文を書き、博士論文を書き、この道に進むことになっていました。

Q.2 どんな学生でしたか?

先ほどの経歴にもつながりますが、二十歳までは休みごとに英語圏 に行っていました。二十歳を過ぎてからはとにかく東南アジアに行 くようになり、ボルネオ島の先住民の家にホームステイに行ったり していましたね。

Q.3 専門の研究領域について教えてください。

グローバル化とエスニシティをテーマとして扱っています。現代は、 たくさんの人が短時間に国境を超えて移動したり、情報を手に入れ たりする時代になっていますよね。けれど、それによって必ずしも人 間の相互理解が深まっているわけではない。国境を超えた真の相互 理解を深めるために、一緒に何かクリエイティブなものをつくり上 げたり、一緒に問題解決にあたる方法を見つけたり、そういった部分 を探っていくのが私の専門領域です。

Q.4 担当している授業の内容について教えてください。

「多文化の社会理論」という授業を担当しています。これは、文化の違いをどのように捉えるか、自分が何人であの人は何人という境界が、 いかに簡単に変わるものであるかということを学生たちと一緒に考 えていく授業です。この授業を通して、日本人と外国人の間の境界そ のものが曖昧になっている時代だということを、学生たちに実感してもらえればと思っています。

Q.5 担当しているゼミの内容について教えてください。

ゼミでも、グローバル化と多文化共生ということをタイトルに掲げ ています。生徒には、自分が興味のある国や地域について、多文化の 状況や異文化共存の状況について調査してもらい、発表してもらっ ています。人によっては、フィリピンのスラム街をフィールドにして、海外までフィールドワークに行く生徒もいますよ。

Q.6 ゼミを通して学生に伝えたいことは何ですか?

「あなたが何人かということは、自分が決めればいいことなんだよ」 ということを伝えていきたいですね。自分の可能性を伸ばすために は、自由に自分を定義していいんだ、何者であってもいいんだという ふうに思ってほしい。そう信じる力を持ってほしいなと思います。

Q.7 社会学の魅力は何ですか?

生きる力の根源と言ったら大げさかもしれませんが、使い方によっては、そういう力になるのではないかと思います。自分はもちろん、まわりの大人たちでも説明のつかないもやもやがあって息苦しいと感じていたときに、誰かが言葉にしてくれるだけで、すっきりと納得できることって高校生や大学生くらいの頃に多いと思うんです。そのもやもやを言葉にする道具として、社会学ってすごく有効なんですね。

Q.8 どのような学生が社会学部により合っていると思いますか?

基本的には、どのような人でも自分の興味を見つけられる学問だと 思います。テレビのニュースを見たり、友だちや家族とのやりとりの なかでだったり、「何かもやもやが溜まっているな」と思う人は、社会 学のどこか片隅に、自分が探していた答えを見つけられるのではな いかなと思います。

Q.9 学生におすすめしたい本を教えてください。

2015年にノーベル文学賞をとっているベラルーシの女性作家が書 いた『戦争は女の顔をしていない』(スヴェトラーナ・アレクシエー ヴィチ著)という本をおすすめしたいと思います。これは、第二次世界 大戦に従軍した女性兵士にインタビューをしたノンフィクション で、社会の残酷さを描き出しつつ、人間に対する優しさも感じさせ る、不思議な魅力を持った本です。普段メディアに映ることのない女 性兵士という存在を描き出すことで、実はメディアが伝える情報は 一面的なものでしかないんだよということを実感させてくれる本で もあると思います。

Q.10 最後に高校生へのメッセージをお願いします。

人生というのはとても楽しいものなので、プラスのことを全部吸収 して、そのためにいろいろなことを経験して、年齢を重ねていってほ しいと思います。そうやって、経験を積んでいくときに、何かもやもや を感じたら、そこから逃げずに立ち向かって、大人になっていってほ しいです。社会学はそのための一助になると思いますよ。

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