社会学科、前田 泰樹教授に聞く、10の質問

2020/06/23

教員

Q.1 今までの経歴を教えてください。

高校生のときから社会学に関心があり、一橋大学の社会学部へ進みました。学部では哲学を、修士課程では理論と方法論を研究し、博士後期課程から医療福祉施設でフィールドワークをはじめました。その後、東海大学へ就職し、総合教育センターで全学部の教養教育を担当しました。大学院健康科学研究科にも所属し、そこで遺伝性疾患をもつ患者さんの聞き取り調査を行うようになりました。その10数年の研究をまとめたものが『遺伝学の知識と病いの語り』という書物です。立教大学には2018年4月に着任したばかりです。

Q.2 学生時代はどんな学生でしたか?

以前から「人が人の行為を理解するということ」について関心があったので、大学では哲学を専攻しました。毎日午前中には図書館へ行き、哲学書を1ページずつ訳しながら読んでいました。その後は、軽音楽部だったので、部室やスタジオで演奏し、居酒屋へ行き、麻雀をして、また図書館へ行くみたいな生活でした。

Q.3 専門の研究領域について教えてください。

私は理論社会学、社会哲学からスタートし、現在は質的研究方法論、医療社会学が専門です。医療現場において、ビデオ分析やインタビューなどの質的調査を行います。前述の「人が人の行為を理解するということ」を考察するフィールドが、私の場合は医療現場になったわけです。最近は、医療者や当事者の方と共同研究を行うことも多いです。2020年の春には、10年来の病院調査をまとめた「急性期病院のエスノグラフィー」という書物を出版しました。

Q.4 担当している授業の内容について教えてください。

学部では「保健・医療の社会学」の授業を担当しています。出生・病い・老い・死といった、人が実際に経験する可能性のあるテーマを保健医療の社会的観点から見ると、どのような問題が見えてくるのかを考えます。例えば、出生にかかわる新しい技術である「出生前診断」について、インタビュー調査の結果や歴史的な経緯などを紹介し、学生たちに考えてもらうなどの内容です。

Q.5 担当しているゼミの内容について教えてください。

ゼミは「日常生活の社会学」がテーマです。日常生活のどのような現象の中にも人々の方法論があるという視点です。主要な問いは「その人たち自身がどのような形で自分たちの行為をつくり、経験しているのか」です。私からテーマを提示することはなく、学生たちは思い思いの興味関心事を取り上げます。例えば観光や終活、日常生活における議論の方法や音楽演奏のアドリブについてなど、さまざまなテーマに取り組んでいます。

Q.6 ゼミを通じて特に学生に伝えたいことは何ですか?

そこに社会がある限り、自分が関心のあるどのような小さく些細なことでも、とるに足らないことではない。ということを伝えたいです。それが社会学的な感覚だと思うのです。小さな問題に直面し考える。そして言語化する力を養ってください。その小さな問題は誰かにとっては重要な問題でもありうるものです。

Q.7 社会学の魅力は何ですか?

多様性と自由度が高いところです。テーマは何でも選ぶことができ、どこからでもスタートできます。そして社会学の持つ多様性の追求はある意味、自分が社会に拘束されている、または誰もが社会に参加していることを理解することにつながります。

Q.8 どのような学生が社会学部により合っていると思いますか?

小さなことでも突き詰めて考えたい人でしょうか?誰もが社会の中で生きていますから、社会学の扉は広く開いています。入口は入りやすく、関心の持ち方と、問いの立て方を理解して積み上げていけば、出口は見えてくると思います。私のゼミでは、自分の立てた問いを真面目に面白がれる人を歓迎しています。

Q.9 学生におすすめしたい本を教えてください。

学生のうちに人生を変えるような、その後の自分の思考を形づくるような本との出会いをしてほしいですね。簡単ではない、すぐには理解できない、歯がたたないような読書体験は重要だと思います。筋トレと同じで負荷をかけながら挑むことが大切です。私にとっては、それはウィトゲンシュタインの『哲学探究』という書物でした。

Q.10 最後に高校生へのメッセージをお願いします。

身近な問題を考えることができる学科なので、社会学科にぜひ来てください!自分の興味関心のあることを知ろうと実際に調査し、人に出会い、意見を聞く作業は世界を広げてくれます。自分をつくっていく過程で役に立つことも多いと思います。

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