現代文化学科、貞包 英之准教授に聞く、10の質問
2020/06/23
教員
Q.1 今までの経歴を教えてください。
東京大学文学部で日本文学専攻でしたが、上野千鶴子先生のゼミに参加したことをきっかけに、文学と社会の関係を考える流れのなかで、社会学へシフトしていきました。大学院の総合文化研究科超域文化科学専攻の博士課程まで進み、その後、米国コーネル大学のアジア研究学部で教えていらした酒井直樹先生のところに研究留学、帰国後は映画専門大学院大学映画プロデュース研究科、山形大学基盤教育院での准教授を経て、2017年から立教大学に勤めています。
Q.2 学生時代はどんな学生でしたか?
学生のころ何をしていたのかと思い返せば、読書、バイト、遊びの3つですかね?読書は、社会学を含めて理論的な本をよく読んでいました。バイトは塾講師やバーテンなどに精を出し、後は友だちと遊んでいました。その後は研究を続けていくなかで今に至るという感じです。
Q.3 専門の研究領域について教えてください。
消費社会論です。現代社会にとって消費は欠かせないファクターなのですが、この消費という行為が17~18世紀から現在までいかに行われてきたのかを、歴史的に研究しています。より具体的には大衆と社会とのかかわり、また欲望の変容を消費というラインから考えています。ですから対象はさまざまで、セクシャリティーや都市、地方創生、アート、住居、家族や生命保険、マンガやアニメを中心とするサブカルチャーまで、幅広い研究対象から現在の社会がいかなる歴史的奥行きをもっているかを考えています。
Q.4 担当している授業の内容について教えてください。
研究領域の消費社会論です。基礎的な理論と現代消費の歴史について幅広い講義を行っています。現代の消費でいうと、フリーミアムやサブスクリプションなどを取り上げていますが、消費単体だけを見るのではなく、そこから派生する労働や教育、家族などいろいろな要素との結びつきも含めて社会生活の動きをとらえています。
Q.5 担当しているゼミの内容について教えてください。
消費社会と都市、というくくりで見ています。具体的な場所で、どのような人が何を買うのか、どのような社会現象が起きているのかを研究します。今は東京の中で興味のある現象を取りあげさせていますが、例をあげると、新宿に来る外国人観光客の研究などを行った学生がいます。今は、外国人観光客の方々は新宿という街全体ではなく、ロボットレストランなど個別の箱として、面白いアトラクションを求めています。こうした具体的な現象を通して社会について考えていくことが目標です。
Q.6 ゼミを通じて特に学生に伝えたいことは何ですか?
社会とはつかみにくいものですが、それを考えることは楽しいということを伝えたいですね。社会は知っていると思っている以上にあやふやで、今ある社会は必ずしも合理的に形成されているわけではない。そうして社会に変化の幅があるということを前提にすれば、もっと自由になれるのではないでしょうか?面白いと思うことを、どんどん見い出してほしいですね。
Q.7 社会学の魅力は何ですか?
社会学は経済学などとは違って、必ずしも形式的に厳密につくられているわけではない分、枠組みや方法論そのものを疑うことができる学問です。社会をすぐに変えることはできませんが、社会学の概念を知っていれば、自分の人生をよりしばられない自由なものにすることができるのではないでしょうか。
Q.8 どのような学生が社会学部により合っていると思いますか?
好奇心がある人、今ある答えに満足せず疑問を持って物事を見る人でしょうか?現代文化学科はさまざまな対象やディシプリンを含んでいるので、自由度は高いと思います。いろいろなことに興味がある人に向いていると思います。
Q.9 学生におすすめしたい本を教えてください。
自分が大学生のときに読んだミッシェル・フーコーの『言葉と物』です。社会学は19世紀に形成された人間の考え方から派生しているので、西欧400年の考え方の歴史が書かれたこの本に触れてほしいですね。難しい所は、完全にはわからなくてもいいのです。私はこの『言葉と物』は現代における古典だと思っているのですが、若いうちはとにかく古典を読むことが重要だと思います。
Q.10 最後に高校生へのメッセージをお願いします。
とにかく自分の好きなことをやってください。部活でも読書でも、自分が情熱を傾けることができるものであれば何でもいいです。社会学を学ぶうえでもそれが武器になり、活きてきます。そして、今、生きている場所だけが世界ではないよ、ということも伝えたいですね。君たちの行く先には、もっともっと広い世界があります。