社会学科、片上 平二郎准教授に聞く、10の質問
2019/05/01
教員
Q.1 今までの経歴を教えてください。
化学を学ぶために上智大学の理工学部に入学したのですが、大学に入ってすぐに自分とは「何か違うな」と感じるようになりました。その頃は、社会学が世間的に流行っていた時代だったこともあり、そちらに興味を持つようになったんです。それで、学士入学で3年生から立教大学の社会学部に入り、その後、慶應大学の社会学研究科修士課程に進み、博士課程からは再び立教大学で学ぶことになりました。それから、2年ほど兼任講師をした後、立教の文学部で助教を務め、一旦兼任に戻ってから、2018年に社会学部の准教授に採用されました。
Q.2 学生時代はどんな学生でしたか?
映画と音楽にどっぷりとはまっている、いわゆる文化系の人間でした。映画は、1950~60年代の日本映画が好きでよく見ていました。音楽は、80年代のYMO周辺のものが好きでしたね。
Q.3 専門の研究領域について教えてください。
現在の専門領域は理論社会学です。社会学者というと、統計データをとったり、フィールドワークに出たりというイメージが強いと思うのですが、理論社会学では文献を読んで理論を構築していく作業がメインとなります。私の場合は、フランクフルト学派というドイツの社会学者のグループに属していたテオドール・W・アドルノという人物の研究を中心に行っています。
Q.4 担当している授業の内容について教えてください。
私が担当している授業の一つが「社会学理論」です。この授業では、社会学という学問がどのように育ってきて、どんなふうに理論をつくってきたのかという歴史を教えています。社会学理論というものは、どうしても抽象的なものになってしまいがちなのですが、授業では映像を多用することで、具体性を持って学生に理解してもらえるよう工夫しています。
Q.5 担当しているゼミの内容について教えてください。
ゼミでは、アイデンティティーとコミュニケーション、文化、社会意識というキーワードを軸に各々が興味のあるテーマを研究して発表するというスタイルを取っています。それらのキーワードに絡められれば、何を研究してもいいというスタンスです。ただ、来年はもう少し、テーマに縛りを入れてみようかなと考えています。とは言え、このゼミがスタートしてまだ一年しか経っていないので、どのようなスタイルが良いのかを、まだまだ実験している段階です。この未完成で実験的な状態を、面白がって一緒につくっていってくれる生徒がいたら大歓迎です。
Q.6 ゼミを通じて特に学生に伝えたいことは何ですか?
今年のゼミでは、各人が好きなものを追求できるスタイルを取りましたが、その中でも、他者がいるということに敏感になってほしいと思っています。自分とまったく異なるテーマを話している人に対しても、その中に、自分と何か共通化できる部分を探してほしい。逆に、話しをする側は、他人に自分の話が役立つように話してほしい。そうやって、それぞれの人が自分の好きなものを追い求めながらも、狭い殻に閉じ籠もらず、その好きなものを通して、他者とコミュニケーションを取れるようになることが理想です。
Q.7 社会学の魅力は何ですか?
社会学の魅力は、興味の幅やテーマをいろいろと広げることが、学問を深めることにつながることにあると思っています。物事を広げ過ぎると浅くなってしまうと考えられがちですが、さまざまに広げた興味の中から共通するものを見つけ、それらをつなげていくことで、新たな発見が生まれたりする。そんな面白さが、社会学にはあります。「広く、深く」が魅力ですね。
Q.8 どのような学生が社会学部により合っていると思いますか?
一つは、いろいろなことに興味を持ちながら、同時に自分をしっかり持っている人ですね。好奇心を力にして、外に向かっていける人は社会学に向いています。もう一つは、あまり器用ではない人。日常に疑問を持つことから始まる社会学では、世の中に対して、ちょっと不器用な人の方が、些細な違和感に気が付けるという部分があると思います。
Q.9 学生におすすめしたい本を教えてください。
どの本というわけではないのですが、一般的に「難解だ」と言われている本にチャレンジしてみてください。私自身、過去にアドルノの『否定弁証法』という本を読み、世の中で「非常に難解」と言われている内容が、自分にはどこか理解できるという感覚を持てたことが、理論社会学をはじめるきっかけになった経験があります。すぐにわかるわけでもない。でも読みたい。それができる時間が学生時代です。
Q.10 最後に高校生へのメッセージをお願いします。
もし、他の人と比べて、自分が「変」なのかもしれないと思う部分があったとしても、その「変な部分」を無理に直したり、潰したりしないでください。大学というのは、その「変さ」を活かせる場所ですし、社会学では、それこそがあなたの武器です。