社会学部メディア社会学科の川畑 泰子助教にインタビュー
2022/05/01
教員
OVERVIEW
社会学部メディア社会学科の川畑 泰子助教に、担当教科やゼミについて語っていただきました。
Webスタディーズの基本は 第一リソースに立ち戻ること
正しく見て取捨選択し有益な情報を選ぶ目を養う
現代の若者たちは、スマホネイティブといわれ、インターネット環境での情報収集が当たり前の「Z世代」です。日々取得・交流する情報量はひと昔前とは比べものになりません。大量の情報の中にはフェイクニュースやステルスマーケティングなど、誤った情報や恣意的な情報が含まれており、若者はそれを鵜呑みにしやすい傾向にあります。
例えば、リツイートの数がとても多く見えても、よく見たら引用リツイートのほうが多かったということはよくあることです。またリツイートで拡散してしまい、意図せず誹謗中傷に加担してしまうこともあり、無意識のうちに加害者になることや、被害者にもなり得てしまいます。また以前の話しですが、学生限定のあるSNSは犯罪の温床となりサービスを終了するなどの例もあり、SNSのリスクは常に存在します。
Webスタディーズとは、大量の情報を数字的に分析すること、また、テキストマイニングという分析方法を用いて単語をキーワードとして分析していくなど、情報を正しく見て取捨選択し、選んでいく目を養います。テキストマイニングとは、大量の文書データを自然言語処理の手法を使って文章を単語に分割し、有益な情報を抽出する方法です。例えば、あるツイートの全量をとってテキストマイニングを行うと、この人はある単語をくり返し使っている、ある特定のアニメや政治に興味がある、攻撃性が高いなどの傾向を出すことができます。YouTubeチャンネルのコメントは、アカデミック用に情報開示されているので、分析可能なものです。その言論空間を見るだけでも、いろいろな差や状況、場合によっては政治的なコンパスが見えたりします。
例えば、リツイートの数がとても多く見えても、よく見たら引用リツイートのほうが多かったということはよくあることです。またリツイートで拡散してしまい、意図せず誹謗中傷に加担してしまうこともあり、無意識のうちに加害者になることや、被害者にもなり得てしまいます。また以前の話しですが、学生限定のあるSNSは犯罪の温床となりサービスを終了するなどの例もあり、SNSのリスクは常に存在します。
Webスタディーズとは、大量の情報を数字的に分析すること、また、テキストマイニングという分析方法を用いて単語をキーワードとして分析していくなど、情報を正しく見て取捨選択し、選んでいく目を養います。テキストマイニングとは、大量の文書データを自然言語処理の手法を使って文章を単語に分割し、有益な情報を抽出する方法です。例えば、あるツイートの全量をとってテキストマイニングを行うと、この人はある単語をくり返し使っている、ある特定のアニメや政治に興味がある、攻撃性が高いなどの傾向を出すことができます。YouTubeチャンネルのコメントは、アカデミック用に情報開示されているので、分析可能なものです。その言論空間を見るだけでも、いろいろな差や状況、場合によっては政治的なコンパスが見えたりします。
データサイエンスを使って データジャーナリズムを学ぶ
メディア社会学科の学生はもちろん、適切で正しい情報とは何か、健全なコンテンツを見分ける目を持つことは必要です。Web上のデジタルデータを分析することで見えてくるものは、推論として参考になるものであり、そのひとつを発見することが、世の中の「なぜ?」を探る入口にもなります。メディアやインターネットの成り立ちにさかのぼり、ネットワーク・情報のつながりや接続性を見る。そこから物事の興味関心に沿って掘り下げることができます。
メディア社会学科にはデジタルデータを研究領域とする和田先生、木村先生という大先生がおられますが、私は女性の目線でデータをとり扱い、社会の不思議な点や問題点を発見し訴求するゼミにしたいと考えているので、ゼミ生も女子が多いですね。
私のゼミの研究分野は、主にデジタルアーカイブなどのデジタルデータを分析して、ビッグデータから「知見」を得ることです。計算社会科学の分野とも言えます。そして中でも、データサイエンスのアプローチを介してさまざまな情報を積み上げ、新しい事実を突き止める調査報道のひとつである「データジャーナリズム」を学びます。物事の文脈を読み解くとき、統計的手法を使いながら、歴史的背景も含め複合的な視点をもつ。そして、さらに批評する力をつけてもらいたいと思っています。
授業の一部はアンケート結果などを用いて、ディスカッション形式で進めます。また、いくつかのGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)を用いてSNSデータ分析・データサイエンスの一端にもふれる課題や、一部希望者にはプログラミング要素も追加課題で出し、学びの機会をつくるようにしています。
ゼミ生一人ひとりが、異なったテーマを研究するのでまとめるのは大変ですが、私が聞いたこともないような事柄に関して質問されることもよくあるので「来週までに調べてくるから!」と、逆に学生から教えられることも多く、毎日驚きの連続です。
メディア社会学科にはデジタルデータを研究領域とする和田先生、木村先生という大先生がおられますが、私は女性の目線でデータをとり扱い、社会の不思議な点や問題点を発見し訴求するゼミにしたいと考えているので、ゼミ生も女子が多いですね。
私のゼミの研究分野は、主にデジタルアーカイブなどのデジタルデータを分析して、ビッグデータから「知見」を得ることです。計算社会科学の分野とも言えます。そして中でも、データサイエンスのアプローチを介してさまざまな情報を積み上げ、新しい事実を突き止める調査報道のひとつである「データジャーナリズム」を学びます。物事の文脈を読み解くとき、統計的手法を使いながら、歴史的背景も含め複合的な視点をもつ。そして、さらに批評する力をつけてもらいたいと思っています。
授業の一部はアンケート結果などを用いて、ディスカッション形式で進めます。また、いくつかのGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)を用いてSNSデータ分析・データサイエンスの一端にもふれる課題や、一部希望者にはプログラミング要素も追加課題で出し、学びの機会をつくるようにしています。
ゼミ生一人ひとりが、異なったテーマを研究するのでまとめるのは大変ですが、私が聞いたこともないような事柄に関して質問されることもよくあるので「来週までに調べてくるから!」と、逆に学生から教えられることも多く、毎日驚きの連続です。
第一リソースに立ち戻り 論評する力をつけることこそが大切
日々進化するデジタル環境も驚きですね。とくに教育現場は変異しており、教育系のアプリの発達はめざましく、東大卒の学生が開設したという学習系のプラットフォームや、受験勉強に関するインフルエンサーが登場するなど、私にとっては衝撃でした。1対1の家庭教師が1対1万になる時代です。さまざまなものがデジタル環境に置き換わる現状を踏まえて、新たな未来の示唆ができる研究を行うことも、私のゼミが目指すところです。
そしてこれからはAIの世界です。AIがフェイクニュースを流すことができ、見極めることはより困難になるでしょう。また、インターネット情報とは秒速・分速のスピーディな情報です。例えば1時間に800リツイートされる現象を見てこれを「流行った」とみるのではなく、瞬速の情報であるという理解を基本にし、ひと呼吸置くことが大切です。そもそも、その情報は新しいのか、似たようなことが過去になかったのかなどを検証する必要があります。
私の専攻が、デジタルアーカイブであることにも関係しているのですが、過去の出来事を現代に置き換えたとき、その時代~時代を見ると時間をまたいで、連綿とつながる普遍性を見い出すことができます。例えば、江戸の歌舞伎とアイドルのライブや握手会は「お客さんとの近さ」「会いに行く」「お客さんもコスプレをして出かける」などの共通項があります。歌舞伎の舞台は、江戸時代で鎖国していたはずなのに、イギリスのシェークスピア演劇が上演された芝居小屋の舞台と構造が同じであったり。そのように場所や時間が離れていても共通している、あるいは時空を超えてくり返されていることはいくらでもあります。
だからこそ、私は学生に「本を読んでください」とよく言います。デジタル脳になり過ぎず、まずは文献をふり返ってほしいですね。古い情報や文献に回帰する能力、立ち戻る試みを忘れないでください。新しい情報とされていることが、実は昔に言われていたという例は山ほどあります。そして、古い情報や文献には「人間の論評」があり「筆の力」があります。調査し、見て、手で書いたものが「第一リソース」。図書館は、その第一リソースの宝庫であり、デジタルアーカイブとして、著作権フリーで開示されているものもたくさんあります。立教大学には素晴らしい設備の図書館がありますのでぜひ活用してください。スピーディに流れる情報だけではなく、リソースを拾って論述できる能力がこれからの時代は大切です。
インターネットは擬似社会です。自由にあつかえる分、よいことに使わなければなりません。メディア社会学科から、正しい知識を持った学生たちが社会へと羽ばたいてくれれば、ネット社会もよりよいものになると信じています。
そしてこれからはAIの世界です。AIがフェイクニュースを流すことができ、見極めることはより困難になるでしょう。また、インターネット情報とは秒速・分速のスピーディな情報です。例えば1時間に800リツイートされる現象を見てこれを「流行った」とみるのではなく、瞬速の情報であるという理解を基本にし、ひと呼吸置くことが大切です。そもそも、その情報は新しいのか、似たようなことが過去になかったのかなどを検証する必要があります。
私の専攻が、デジタルアーカイブであることにも関係しているのですが、過去の出来事を現代に置き換えたとき、その時代~時代を見ると時間をまたいで、連綿とつながる普遍性を見い出すことができます。例えば、江戸の歌舞伎とアイドルのライブや握手会は「お客さんとの近さ」「会いに行く」「お客さんもコスプレをして出かける」などの共通項があります。歌舞伎の舞台は、江戸時代で鎖国していたはずなのに、イギリスのシェークスピア演劇が上演された芝居小屋の舞台と構造が同じであったり。そのように場所や時間が離れていても共通している、あるいは時空を超えてくり返されていることはいくらでもあります。
だからこそ、私は学生に「本を読んでください」とよく言います。デジタル脳になり過ぎず、まずは文献をふり返ってほしいですね。古い情報や文献に回帰する能力、立ち戻る試みを忘れないでください。新しい情報とされていることが、実は昔に言われていたという例は山ほどあります。そして、古い情報や文献には「人間の論評」があり「筆の力」があります。調査し、見て、手で書いたものが「第一リソース」。図書館は、その第一リソースの宝庫であり、デジタルアーカイブとして、著作権フリーで開示されているものもたくさんあります。立教大学には素晴らしい設備の図書館がありますのでぜひ活用してください。スピーディに流れる情報だけではなく、リソースを拾って論述できる能力がこれからの時代は大切です。
インターネットは擬似社会です。自由にあつかえる分、よいことに使わなければなりません。メディア社会学科から、正しい知識を持った学生たちが社会へと羽ばたいてくれれば、ネット社会もよりよいものになると信じています。