社会学部国際社会コース(現代文化学科所属)4年の金珉華さんにインタビュー

国際社会コース 金珉華

2023/05/10

在学生

OVERVIEW

社会学部国際社会コース(現代文化学科所属)4年の金珉華さんに、立教大学での学びについて語っていただきました。

幅広い学びと経験を積み重ね自己を見つめた4年間

国際社会コースの特徴を活かし英語力を強化

高校で外国語コースに所属していた私は、卒業しても英語学習を継続したいという思いがあったので、大学では国際社会コースを選びました。英語を使用して社会学の知識を身に着けられる言語学習の環境がそろっているのは魅力的でした。さらに、自身の興味関心の幅がメディアや差別・偏見、表現活動など広く多岐にわたっていました。国際社会コースは、所属する現代文化学科のほか社会学科、メディア社会学科と3学科の授業を幅広く横断的に受講できる特徴があり、それは私にとって理想的でした。

国際社会コースは、英語に特化しているので1年次から期待通り英語にたくさん触れることができました。「上級英語」は、英語で社会学的な問いを立て、レポートを書いて発表を行う授業でした。社会学的な問いを立てること自体まだよくわからず、アカデミックな英語スキルもまだ十分でないなか、それらを英語で記述することがとても難しかったです。

私の立てた問い「日本の自殺率はなぜ高いのか」を通して、頻繁に英語で長文を書き、言い回しやレポートを書くうえでの出典のつけ方などのルールを学びました。レポートをワードで作成し提出するだけではなく、そのレポートがスクリーンに映し出され、先生が文法などをチェックし指摘を入れてくださるので、添削されるたびに次からは指摘を減らそうと、力を入れてがんばりました。

高校生までの英語学習は、単語や文法を覚えるインプット型でしたが、覚えた知識を使って1000ワード以上のレポートを書いて発表する経験ができ、アウトプットの力がつきました。1年次ではほかにも、ディスカッションや必修授業など、英語の授業はとても充実していました。

差別や偏見、社会と芸術の関係について学びたい

英語のスキルアップは入学当初からの目標でした。そして私には、ほかにもまだ追求し、知りたいことはたくさんありました。それは自分のアイデンティティに関することです。私は日本で生まれ育った在日コリアン3世で、以前から当事者性を感じてきたことは、自分にとって大きなことでした。大学進学にあたり、マイノリティをとり巻く実態と、差別と偏見がなぜ起きるのか、その仕組みを知りたい、学びたいという気持ちを強く持っていました。映画や音楽など芸術の力を借りて差別や偏見に対抗していこうとする動きにも興味があったので、メディアやアート、表現活動の中でできることが何かを探りたいと考えていたのです。

そこで出会った授業が「社会と芸術の関係について」の知見を広げる機会になりました。1年次で受けた「文化人類学」では、2010年に岡山県で運営されていたアートスペース「かじこ」の、宿泊者がイベントを行う宿泊システムについて、3年次に受講した「現代文化論」では、ある地域の古民家を改修しながら地域の人とつながる「パーリー建築」の活動などの事例紹介に、とても興味を持ちました。こうしたアートプロジェクトのような、社会活動をとり入れた授業は、自分の前提知識にはまったくなかった活動を知ることに繋がりました。とくに「現代文化論」の小泉先生には、ゼミでも大変お世話になり、より多くの活動を知るきっかけになっていきました。

1年次からさまざまな刺激を受け、私の活動は学外のサークルへも広がりました。それは、もとは立教大学のサークルだった「服飾デザイン研修会」です。ファッションは、高校生のころからやりたかった表現活動のひとつでした。夏と冬の年2回、ファッションショー開催にあたり、私はデザイナーとして服作りを担当。それだけではなく、ショーのリハーサルでは照明機器などの設営を手伝い、他大学の仲間づくりも行いました。自分の「物を作りたい」という希望を叶えることができました。

英語文献でコロナの最前線を知り、社会学の中のアートに触れる

2年次の「Reading Sociology in English」は、国際社会コース必修の中から選んだ授業でした。そのころは日本でもまだコロナウィルス感染症の詳細がわからなかったころでした。そのような中、この授業の前提は「コロナ関連の文献を読む」というものでした。タイムリーなテーマを扱った英語文献の輪読を行ったことで、より自分の身に引き寄せながら考えることができました。

英語文献は、衛生面についてなど専門的な用語が多く、言い回しが難解な部分もありましたが、それらをひとつ一つ和訳し、紐解いていくと、日本ではまだ知られていないような情報が書かれていることに驚きました。私がレジメを担当した回のテーマは「マスクの処理や廃棄の問題」だったので、日本でマスクが買えないという騒ぎがあるころに、まさか世界でマスクが環境汚染問題になっているとは想像もしていませんでした。

もうひとつ、2年次ではやはり小泉先生の「アートの社会学」を受けたことは印象的でした。この授業では、アートと社会構造や社会制度の関係性について学びます。これこそ私が大学で学びたかったこと、やりたかったことでした。それはオンライン授業の中で「展示会を開いてください」という内容でした。私は人種による格差をテーマに絵を書き、それをコマ撮りした4作品をSNSツールに投稿する形で最終発表としました。

人種というキーワードは、前述のように私にとっては切り離せない問題でした。自分のアイデンティティについて考えるとは何かなど、頭の中にあることを、アートを通して表現できることに可能性の広がりを感じました。そしてもっとも私が魅力的に思ったことは、社会学がアートや表現活動の領域としっかりつながっている。それを実感できたことでした。

「メディアとジェンダー」は自分に何ができるかを考えさせられる授業

さまざまな視点からジェンダーについて議題が設定される、3年次の「メディアとジェンダー」の授業は、自分にできることは何かを考えさせられる授業でした。少人数で積極的にディスカッションを行うもので、ジェンダーに関する記事や映画、書籍などの情報を交換したり、女性のメイクについて議論したこともありました。議論において、毎回結論が出るわけではありませんが、自分の中の疑問や、おかしいと思うモヤモヤしたものを吐き出す場として頭の整理ができてよかったです。人の意見を聞いて、自分の素直な気持ちを語り合う経験は重要だなと思いました。そして、普段の友人・知人との会話においても場の空気に流さず、同調せずに自分の意思表示をすることの大切さにも気づきました。それまでは、相手の話に違和感を持ち、心の中で「そうは思わない」と感じていても言い出せなかった自分がいました。小さなことですが、ちょっとした会話の流れの中で、例えば「私は、それはあまり関係ないと思う」などと、勇気を持って意思表示をしようと考えるきっかけになった授業でした。

アートプロジェクト参加をきっかけに卒論のテーマが決まる

ゼミは迷わず、小泉ゼミに所属しました。研究テーマは「社会と芸術の関係について」です。現代アートの現状や可能性についての映像の視聴や文献の輪読などを行い、3年次のゼミ合宿では、地域芸術祭のパイオニアといわれている新潟県十日町市の「大地の芸術祭」へ。4年次では瀬戸内海の島々を舞台に開催される「瀬戸内国際芸術祭」を実際に見に行ってきました。その後は美術館へ行くようになるなどアートがより身近になり、アートプロジェクトに参加してみたいと思うようになりました。

そこで、小泉先生のネットワークの中で出会ったのが「海外に(も)ルーツを持つ人々」を中心に映画を作る「Multicultural Film Making」というプロジェクトでした。この経験が私にとっては素晴らしく、心動かされるものがありました。この映画制作を通して、自分自身の背景を語ることができる可能性を感じ、ちょうど卒論のテーマを決めなくてはならない時期だったこともあり、先生にこのようなプロジェクトを事例にして、研究を行いたい旨を伝えました。すると先生は「ソーシャリー・エンゲイジド・アート」というキーワードを与えてくださり、卒論のタイトルを「ソーシャリー・エンゲイジド・アートを介した『在日外国人』の『語り』の場の形成と可能性について」に決めました。

3年生のときには、アートよりもエンタメに目が行きがちだったので、卒論もエンタメ界における韓流ブームと、在日コリアンのアイデンティティ形成の影響について研究しようと考えていましたが、もっと広く多層性のある「在日外国人」を軸にアートとの関係性が書けるのであれば、それをテーマにしてみたいと心が動きました。

自分が心の底から「やり遂げたい!」と思うテーマに出会う

ソーシャリー・エンゲイジド・アートとは、作り手が対話や討論、コミュニティへの参加や協同といった作品以外の実践を行うことで、社会的価値観の変革をうながす活動をさします。その意味から「在日外国人」の中には沈黙を強いられている存在もあり、彼らの「語り」を拾い上げる場としてのソーシャリー・エンゲイジド・アートについて考察してみようと卒論に挑みました。先ほど述べた映画制作は3年生で完結し、その後に引き続き参加した映像制作のプロジェクトを参与観察としてとり上げることにし、参加者と関係者の方々にインタビューをとり、データを集めるなどの作業を行いました。

自分が心の底から「やってみたい!やり遂げたい!」と思うテーマに出会うことができたことは、大学生活における最大の収穫となりました。しかし、気持ちとは裏腹に、初めて書く卒論をまとめ上げる作業はとても難しいものでした。先生にはテーマ性のよさは認められたものの、事例に対する考察の厚み不足、文章構成の問題などを指摘されました。卒論に納得がいかないまま就職活動を行っていましたが、私は引き続きこのテーマと向き合うために大学院に進学する選択を決意しました。この研究は私自身にかかわること。自分自身の生活にも直接関係する「在日外国人」というテーマに対して、微力ながら、少しでも何かを積み重ねることができる可能性を信じ、それをモチベーションに研究に向き合っています。新たな気づき、発見を期待して大学院へ進もうと思っています。

この4年間、自分の興味関心に合わせて国際社会コースで学んできました。英語に関していえば1~2年生で1000ワードを越え、今では2000ワードを越えるレポートを書くことができるようになったことは自分でも誇りに思っています。英語で理論的な思考ができるようになったのは、まさに国際社会コースでなければできなかったことです。そして社会学部所属でいながら、ゼミの中で芸術に触れ、芸術と向き合いながら自分のルーツを考える機会を得ることもできました。立教大学社会学部には魅力ある先生方がそろっているので、目的意識を持って自分の世界を追求していける環境があります。自分の興味関心に従い、欲張っていろいろなチャレンジをしてきてよかったと思っています。

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