座談会

大曲雄介 Yusuke Omagari 金珉華 Minhwa Kim 日比野真奈 Mana Hibino 深町泰士 Taishi Fukamachi

2023/05/23

在学生

OVERVIEW

幅広い分野を扱う社会学部へと、それぞれの展望を持って入学した各学科のみなさん。
多彩なプログラムに経験豊富な教員陣という恵まれた環境のもと、
何を選び、どのように学びを得ていったのか。
社会学部ならではの経験を、座談会形式で大いに語っていただきました。

日比野
社会学は、自分がテレビや本などで見たこと、興味関心のあることすべてがつながります。ですから学んだことを、日常生活で活かすことができる点も社会学のおもしろさです。
深町
私は、やりたいことが明確に定まらないまま入学しました。しかし、社会学はとり扱う分野が広いので、そこからそれを探すことができました。実際、自分が経験する日常を学問の領域に落とし込めるところが、社会学の魅力だと思います。
社会学は、可視化されていない人たちに光を当てられる学問だと思います。社会的弱者やマイノリティ、差別・偏見にさらされている人などの声を拾いあげる強さを持っていると思いました。
大曲
興味のあることは「何でもできる」のが社会学。とにかく、できることはたくさんあります。私は映画宣伝の仕事がしたくてメディア社会学科に入りましたが、3年次の特別授業でビッグデータと出会い、データ分析の楽しさを知りました。その授業が転機になり、結果的に就職は、ITベンチャー企業に決まったというレアケースだと思います。
私は国際社会コースなので、英語で社会学を学んだり、英語で授業を受けることに最初はついていくだけで大変でした。苦労はしましたが、高校の外国語コースから学んできた得意を磨き、スキルアップすることができました。
国際社会コースの特徴は、3学科の授業を広くとることができることもあり、グローバリゼーションを学ぶ「国際社会学」や、自分が知りたかった「差別と偏見の社会学」、アートと社会の関係性を学ぶ「アートの社会学」などさまざまな分野に触れました。現代文化学科というだけあって、現代社会の文化的なうねりを授業から体感できました。
大曲
1年次で受けた「文化表象論」で「ドラマ性とは何か」について考えたときはとても抽象的なことを論じなくてはならず「これが大学の勉強か!」と軽く衝撃を受けました。そして2年次の「メディア・テクノロジー・社会」や「ポピュラーカルチャー論」などを受けていくと、授業の内容がつながっていることを体感しました。社会学は汎用性があって、人生においても役立つ学びであることが理解できました。
深町
「現代文化論」では「当事者性」をテーマに、今まさに起きている社会問題をとり上げ検証していきました。以前はテレビのニュースや新聞などの情報を、他人事のように感じていましたが、それが社会にどのような影響を及ぼしているのか、自分とどのような関わりがあるのかという当事者性を持って、とらえることができるようになりました。
また、とくに社会学の魅力がわかり、好きになったきっかけが「社会学原論1」でした。それは、カナダの社会学者アーヴィング・ゴフマンの「人は生活の中で舞台ごとに役割を変えて演じている」とする概念をもとにした「表局域」と「裏局域」という考え方です。自分の行動に心当たりがあったので、日常のことが学問として成り立つことにとても驚きました。
日比野
私はアスリート選抜入試で入学したので、1~2年次は部活と学業の両立が大変でした。寮で生活を送りながら1限の前に早朝練習をこなし、授業が終わるとまた練習という日々でしたが、とても充実した毎日で、仲間との生活は自分を成長させてくれました。
勉強面では、自分が以前から興味を持っていた宗教を学問的にとらえてみたいという希望があり、キリスト教系やスピリチュアル系、最近話題の新興宗教系などの授業を多くとりました。ほかにも環境や公害、卒論のテーマにもなった東日本大震災など、比較的新しいトピックに触れ、知識を広げました。全学共通科目で、多様な授業を履修できたことがよかったです。
深町
私たちの世代は1~2年次がオンライン授業、3年次のゼミで対面授業が復活しました。オンライン授業もよい面がたくさんありましたが、やはり対面で仲間と会うと盛り上がり、研究テーマが類似した人とグループになって意見交換にも熱が入り、お互いに切磋琢磨できました。
大曲
協力したといえばやはりゼミです。卒論にとり組むなかでは、つい入り込んで持論を主張してしまい、客観的視点が抜けてくるのでゼミで先生や仲間から意見をもらうと、新たな視点に気づくことが多々ありました。
私は、卒論で自分が心の底から「やり遂げたい!」と思うテーマに出会うことができました。熱を入れて努力したのですが、やはり客観視が難しかったです。データを入手し、文字を起こし、そこから先の考察を十分に深めるための時間が足りなくなってしまいました。興味のあることをいろいろ学んだ4年間だったのですが、最後の卒論執筆では納得するものを書き上げることができませんでした。しかし、これからも向き合い続けたいテーマと出会うことができたので、今後は大学院に進学し、引き続き研究を続けることにしました。
深町
私のテーマはゼミ論文、卒論ともにアニメを観た経験を語る行為に焦点を当てた「アニメを語るということ」でした。先行研究、人生初のインタビュー、そのデータの書き起こしと考察など、ゼミの先生の全面的なサポートがなければ完成できなかったと思います。
就活がいちばん大変な時期に、卒論の作業も同時並行だったので、面接などの予定が入っているなか、インタビューをお願いしている人と空いている日程を合わせるのが大変でした。
日比野
卒論のテーマを決めるとき、3年次から長い間とり組む論文なので、自分が興味を持って書き続けられるテーマにするのがよいと思いました。私はゼミのフィールドワークで訪れた、東日本大震災で復興がすすまない福島県双葉町をとり上げました。そしてそれに、自分が入学したときから興味を持って勉強してきた宗教を結びつけました。東日本大震災を調べるうちに、震災をきっかけに臨床宗教師という新たな資格制度が整えられたことなどを知り、テーマを「災害と宗教と『心のケア』」に決めました。
大曲
私は卒論で、インターネットユーザーのデータ分析とインタビューを行いました。自分が卒論で何を学んだのかというと、仮説を立てることの大切さでした。ビッグデータを扱う場合、やみくもに分析しても時間がかかるだけで、まったく思うような結果を得ることができません。そのデータに対して仮説を持って挑み、ある程度ストーリーを立ててとり組み検証することが、結果につながります。社会学部では、ビッグデータに限らず分析を行う視点や、検証する能力が求められると思いました。
日比野
とり組む前は「何万字もの論文を書けるだろうか」と不安はありました。しかし、書き上げた今思うことは、これを書いたからこそ受けてきた授業、テスト、レポート提出など、学びの蓄積の総決算として、アウトプットすることができたという達成感です。1~2年次で学んだことを3~4年次で咀嚼し、学び直しができました。
私の場合は、提出こそできたものの、多くの重要な論点を残したまま、時間切れという形になってしまいました。しかし、卒論執筆の過程で、じっくり自分自身と向き合うことができ、その時間の中で見えてきたことはたくさんありました。とくに自分の主張を相手に説得させる文章の書き方が自身の弱点だと気づけたことは大きかったです。このような課題点を克服すると同時に、さらに研究を深めていきたいです。
卒論のタイトルは「ソーシャリー・エンゲイジド・アートを介した『在日外国人』の『語り』の場の形成と可能性について」です。研究を通して参与観察のためのインタビューに協力してくださった友人やアートプロジェクトのプロデューサーさん、スタッフの皆さん、参加者の方々へのお返しをしたいと思っています。
大曲
自分が興味を持ったことを、とことん突き詰めて書く体験は重要ですよね。これをやるからこそ、自分が4年間学んできたことの「解」が出せるのだと思います。金さんのように研究をさらに続ける人もいるし、私のように研究テーマの関連業界に就職するケースもありますが、社会学部所属の学生は自分の学びを形に残すことができて、それを自信にすることができます。
日比野
そうですね。私は部活に打ち込み、そのうえ、学部を飛び越えた自由な学び方ができたことで、広い領域から興味関心に沿って学びを深められたことは自信につながりました。
深町
立教大学は自由度が高いです。私も、社会学部で自分の世界観を広げることができました。しかし、そのために主体性は必要です。いろいろなものがあるからこそ、主体的に行動して、積極的に興味のある分野に触れていかなければ、自分の世界は見つけることができないと思います。
社会学部は欲張ることができる学部だと思います。私はとても欲張って学びやチャンスをつかみに行った結果、大学生活をとても充実させることができました。大学生のうちはフットワークも軽いですから、学外の活動などにも参加することもでき、さらに世界を広げる楽しさもあります。

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