社会学部社会学科4年の久保田尋さんにインタビュー

社会学科 久保田尋

2024/04/12

在学生

OVERVIEW

社会学部社会学科4年の久保田尋さんに、立教大学での学びについて語っていただきました。

志を持って社会学と向き合い悩み「社会的に弱い立場にいる人たちのために」の初心にかえる

社会学から社会課題解決法を学ぶことを目的に

私が立教大学社会学部を選んだ理由は、初めから明確でした。社会課題とその解決に関する手法について学びたかったからです。なぜかというと、自分が一時期体験した、実家におけるシリアスなある出来事がきっかけです。今はそれも無事に解決し、こうして私大に通い就職も内定をもらうことができましたが、その出来事以来、自分の関心は社会問題や社会福祉、メディアでよく伝えられるような貧困や格差、雇用問題、ホームレスなど諸問題に対抗する術や、どのような組織が活動しているのかなどについて知りたい、という想いが高まりました。

ここは、文学部などの中に社会学科があるのではなく、独立した社会学部として大きな組織であり、教員の方々や研究設備などが整っていることで定評がありました。「社会学」は人の数だけあると言われており、音楽社会学や環境社会学など何でも「社会学」の枠組みの中に入る幅の広い学問です。

自分のやりたいことははっきりしていました。高校3年生のころ、立教大学社会学部のHPやパンフレットをじっくり読んでいたので、社会学は「当たり前を疑う」「多角的な視点で物事を分析する」学問であることは事前に知っていました。講義は実際、そのことを実感するものばかりでした。

1年次の「公共の社会学」では、まちづくり・都市再生に関する実態について、行政やNPOなどの主体に着目しながら分析するもので、国際比較も同時に行いました。その中では「インナーシティ問題」の概念について初めて知って衝撃を受けたり、欧米のNPO法人はビルを持っている団体があるくらい、国に頼らなくても資金・人材が潤沢であること。そのため、日本に比べて、市民に寄り添った活動を展開することも可能などそれまで知らないことばかりで、あらためて「当たり前を疑う」「多角的な視点で物事を分析する」視点を持つことで、物事のよい点と悪い点をバランスよく認識することが可能になったと考えています。

シングルマザーの調査でわかった支援の難しさ

2年次の「NPO・NGOの社会学」では、実際にNPOの代表や市役所の職員の方といった現場の最前線で活動されている方と触れ合うことができ、自分の知りたいことをピンポイントで学ぶことができました。組織を立ち上げるときの複雑さ、社会性を優先しつつ利益を上げることの難しさ、そこで働く厳しさなど、現場のリアルを感じることができました。

そして大学で人生初のインタビューを行ったのは、3年次の「質的調査法」でした。高校生のときから、この学部でできると期待していた“実際にフィールドに立って調査する”という実践的な学びです。

私はシングルマザーについて、とある母子寮の所長の方にインタビューを行いました。ひとり親世帯が生きやすい社会にするためには、何が必要かを知りたかったからです。

このインタビューで想定外だったことは「ひとり親になった経緯でもっとも多い理由は何ですか?」という質問をした際、「これといったひとつの答えはなく、本当に千差万別です」という回答が返ってきたことです。私は自分の知識不足を痛感しました。まとめて傾向を分析することはナンセンスで、個別ごとに対応しなければいけない世界だということが分かり、自身の社会課題に対する見方が大きく変わりました。

そして私は3年次の秋も、引き続き働くシングルマザーの調査を行いました。前回の人生初インタビューの反省は活かしましたが、お話を実際に聞くと新たな壁にぶつかりました。2組にお話しを伺ったのですが、おひとりは正社員で年収はあり、ご主人と死別してまだ精神的に立ち直れていない方。もうおひとりは離婚で、収入は少ないですが、持ち家があって親の援助があり離婚してよかったと思っている、などの実態を聞けば聞くほど、答えはひとつではないと実感しました。同じシングルマザーでも、死別と離婚とではケースが違って状況も違う。前回のインタビューで所長さんが「千差万別」とおっしゃっていた意味を、あらためて実感しました。

卒業論文はシングルファザーを題材にさらに調査

3年次のゼミは「家族社会学」が専門の本多ゼミに入り、4年次の「卒業論文演習1」そして卒業論文に取り組む中で、今度はシングルファザーをテーマにしました。自分は何に関心があるのか、何に対してなら情熱を注ぐことができるのかといった自身の根本的な部分について、再確認できたことがいちばんの収穫でした。

さまざまな学部がある中で、社会学部を目指し入学した選択、そしてこれから就く仕事の方向性はすべて「社会的に弱い立場にいる人たちのために」という軸で繋がっていることを改めて認識することができ、これからもブレずにやっていこうという気持ちが高まりました。

卒業論文のタイトルは「父子世帯を通して見る現代社会~必要不可欠なモノ・コトの明確化を通じて~」。父子世帯の基本的情報の収集や分析、インタビューを行い、最終的には行政やNPO、企業といった主体や日本社会は今後どうしていくべきなのかといった結論で締めくくりました。

父の紹介でインタビューをお願いした2組の父子世帯は、どちらも奥様とは死別。シングルマザーに対してシングルファザーの死別は4倍という数字には驚きましたし、制度に不足はないかを伺うと「あまり手厚いと、さらに欲しくなるから今のままで充分」というコメントにも衝撃を受けましたね。男性は弱音が吐けないことや、子供の人数によっても状況は違いますし、お父さんよりもお子さんの精神的ケアの必要を感じるなど、父子・母子世帯ともに個別にきめ細やかな支援が今後も課題であると感じました。

卒業論文は、3万2千字という決して少なくはない文量を書く大仕事です。学生たちは真剣に自身にとって最適な題材を探していました。トイレから見るLGBTQ、蛙化現象やアイドルファンについて、親ガチャの研究など、興味深いテーマばかりです。自分自身を見つめ直すという意味でも、4年間の総まとめとして意義のある研究だと思います。

私自身は、書きたいことをすべて吐き出せましたし、シングルファザーの実態は「これを読んでいただければわかります!」と自負できるものになり、成長できたなと満足しています。

西原総長のひと言もあり、就活を方向転換

就職は、公務員試験に合格し、東京都庁で教育関係に携わる予定です。そこに至るまでの話に少し時間を戻すと、私は入学当初から「社会課題解決のための手法」を学びたいというビジョンがはっきりしていました。しかし、自分が興味のある、貧困や格差など比較的暗い話題の講義をたくさん受けているうちに、気分が重くなっていきました。福祉業界によくあると聞いていた「支援する側が、される側になってしまう」問題です。

ですから、3年次の半ばまでは社会課題を解決したいという希望を、就職に結びつけることを避けていました。食べることが好きだったので、働くなら食品業界がよいかもしれないと思い3年次の夏に、4社の食品関係の企業で3Daysのインターンシップを体験しました。しかし、どの企業へ行っても利益優先で考えていた現実とは違いました。一方で本当に関心のある道から逃げている自分がいて、この時期は苦しかったですね。

しかしそのころ、キリスト教学科教授であり西原総長の「ひとり一人、社会的に弱い立場にいる人たちのために目を向けて」というメッセージを聞いたこともあり、自分の根本を見つめ直し「逃げずにこの道を」と方向転換ができました。3年次の秋に公務員試験を目指すことになるわけですが、急に決めたので勉強する時間も費用もないなか、とにかく独学で取り組みました。

職場では、義務教育におけるICT教育の環境整備を通じて、塾に行かなくても進学することが可能になる仕組みを作り上げたいと考えています。さまざまなバックボーンを持つ子どもの学力を引き上げたいですね。

ここまで来ることができたのも、温かい目でご指導、見守ってくださった先生方々のおかげです。大学は先生との距離がもっと遠いものかと思っていましたが、そんなことはありませんでしたね(笑)。

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