社会学部社会学科3年の新井千遥さんにインタビュー

社会学科 新井千遥

2024/04/14

在学生

OVERVIEW

社会学部社会学科3年の新井千遥さんに、立教大学での学びについて語っていただきました。

社会学を学びながら「自分らしさ」も見つけられました

自分自身も社会調査の結果になりうる「参与調査」に興味がわく

私は、大学で学びたいことが漠然としていましたが、「社会」を取り扱う社会学という幅広い学問であれば、勉強するうちに自分の研究したい対象が見つかり、かつそれを深められると思いました。

漠然と気になっていた分野は、社会心理学やインターネットについてです。社会心理学に興味を持ったきっかけは、人間関係の形成に関心があったから。また、インターネットに関しては、とくに普段からSNSを頻繁に使用するので関心が高かったからです。

1年次の「社会調査法2」は印象に残っている講義です。それは「参与調査においては、自分自身も社会調査の結果になりうる」という点が面白かったからです。参与調査とは、特定の集団や人々と一緒に生活をして、分析する調査法です。アンケートのような調査票調査は、数値やグラフが調査結果として出てくるのに対し、参与調査はその人が書いた記録と、「その人自身」の変化が調査の結果として出てきます。人間そのものが結果になり得ることが不思議で面白く、印象に残りました。

私は入学するまで、何かの調査の結果と言えば、数字や統計データのような客観的なものを想像していたので「主観的な変化や、目に見えないものも成果になり得る」ということに驚きと新鮮さを感じました。これは、普段の生活の中で活かすというより、ゼミの研究内容や調査方法を考えるときの指針になっていると思います。

現在3年次のゼミで、学期末までに簡単な論文を書く予定です。ここでの論文案や研究方法を考える際は、やはりアンケートよりインタビューのような、人の考えを深く知ることができる研究方法に興味があります。数字や客観的なデータももちろん重要ですが、特定の人の考えや価値観、またそれが自分にどう響くのかという点に関心がありますね。

「消費文化論」を学び自身の思考や生活に変化が起きた

2年次の「消費文化論」では、とくにファストファッションについての内容が印象に残っています。私はそれまで、中国のファストファッションブランドにはまっており、ハイペースで服を買い漁っていました。しかしこの講義で、そういったファストファッションを作る工場はとても搾取的な労働をさせているという内容のドキュメンタリー映像を見て、服に対しての考え方が変わりました。また、この社会が、いかに人々を消費行動に走らせようとしているのかについても知ることができました。それ以降、物を買うときはその背景や安さの理由について、まず考える癖がついたと思います。

そしてさらに、普段の生活をもっとシンプルにしたいと思うようになりました。ファストファッションにどっぷりと浸かっていたころの私は、SNSでの広告や人気商品に飛びついていましたし、期間限定と言われるものは食べないと気が済まず、服が多すぎて部屋にあふれていました。しかし、この講義を受けてからは気に入った服を長く使ったり、物を買う前に下調べをして、本当にお金を払う価値があるのかを考えるようになりました。結果的に浪費の習慣を断ち切ることができました。

ガダマーの「地平の融合」が与えた影響

今は、受講中の「社会認識と哲学」が、とても面白いです。哲学は難しそうですし、敷居の高さを感じていましたが、この講義はとてもわかりやすく、いろいろな先人たちや学生の考え方を知ることができるのでとても刺激を受けます。哲学者の価値観を知ると、自分と似ていると思うときがあり「私だけじゃなかった!」と安心することがあります。分析や考察が遥かに高度で示唆に富んでいるので、逆にアップデートされているような感覚を持てて、その点も楽しく感じます。

それもあって、普段の生活の中で、哲学者の考えを代入するようになりました。例えば、ガダマーという学者の文献に「地平の融合」という理論があります。彼の考え方は、人それぞれ異なる価値観や考え方を指す「地平」を、対話を通して融合するというものです。普段の生活の中で、自分とはまったく違う意見や考え方を持っている人に会うことがあります。しかし私は、このガダマーの思想を知ってから、その人の考えには理由があり、バックグラウンドが必ずあるので、それを尊重しつつ同じ方向に向かうことを目指そうと考えるようになりました。就職活動のなかでのグループディスカッションやサークル活動でも、「地平の融合」は自然と活きてくる考えだと思っています。そして日常から「なぜ?」と、疑問を持ち考えることが好きになりました。

どんどん自分らしさを確立したくなった大学生活

3年次のゼミは理論社会学を専門とする、片上ゼミに所属しました。研究のテーマは「アイデンティティ、コミュニケーション」で、基本的にはゼミ生の興味関心に合わせて先生が選んだ文献を読みます。前期は自傷性自己愛や死にたいとつぶやく人、観光やキャラクターについてでした。後期では、コミュニケーションの社会学についてなど幅広い分野の文献を読みました。どのトピックも、自分の生活の中で役立ち、はっと気づかされるような内容が多く刺激を受けました。

これからは、本格的に卒論をまとめていく時期です。テーマはまだ固まっていませんが、趣味でインターネット上に日記をつけていることから、「ライフログについて」研究しようと思っています。ライフログとは、人の生活の様子をデジタルデータとして記録することですが、これまでも連綿と人々が行ってきた営みです。今はその手段が多岐に渡るので、現代の人々がどのような方法で行っているのか、何を残そうとしているのかなどについて分析できればいいなと考えています。

3年間、社会学を学んできたことは私にとって大きなプラスでした。それとは別に、大学生活の中で学んだことがあります。それは「人と違ったほうが人生は面白い」ということです。例えばレポートひとつでも、自分独自の個性的な考え方のほうが深みがあるように思えますし、リアクションペーパーの場合でも、自分にしか書けない内容を書いているほうが楽しいですし、書き甲斐があります。

また、立教大学には多種多様な人がいて、出身も国籍もさまざまです。独自な発言をしても、受け止めて認めてくれる人が多いと思います。大学生活の中で、どんどん自分らしさを確立したくなっていく感覚を持つことができ、それを実行できたことはよかったと思っています。「自分らしさ」を表現できる技を身につけることができました。

そういった意味では個性を表現できる場として、所属するサークル「フリーペーパーサークルSeel」はとても楽しい活動です。興味深いフリーペーパーを制作・発行するにはどうしたらよいかを皆で考え、毎号の企画も個々がプレゼンを行って決めます。人に読んでもらうため、それまでにないテーマを取り上げようと個性派部員ぞろいでモノづくりを行っています。

将来の仕事ですが、現在のところ希望業界はIT系です。自分にとってはまったく未知ですが、なるべく便利な世界になるよう技術を使うことに興味があるからです。技術を通して人材不足や働き方など、企業問題を解決するようなコンサルティングにも興味があります。私ならではの提案を行い、それを面白がってもらえるような職場だったらハッピーですね。今後も自由に、私らしく生きていきたいです。

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