座談会

田邉美央 野﨑誠矢 橋本真由子 米田隼輔

2026/04/06

在学生

OVERVIEW

激変する社会や多彩な文化を解き明かす、社会学部には、
ありとあらゆる社会現象に対応する講義・演習科目と、
層の厚い専門教員陣がそろい「知の蓄積」をサポートしてきました。
4年間の学びを経験した各学科のみなさんに
その苦労や楽しさを振り返ってもらう座談会。
社会学部と社会学の魅力について、大いに語っていただきました。

田邉
私が「大学に来たのだ」という静かな感動を覚えた1年次の授業が「社会学原論」でした。大教室で数百人の学生が一斉に「社会学」という学問に向き合う光景に、圧倒されたことを覚えています。しかも大学生活最初の授業のテーマが「自殺論」。高校までの勉強とは違う次元に入ったことを肌で感じました。「自殺論」では、個人的に見える現象の背後には、目に見えない社会の力が働いていること。そして物事を個人の責任に帰結させず、社会という大きな枠組みで捉え直す視点=社会学的想像力を学び、世界の見え方が一変しました。
野﨑
立教大学の授業は非常に幅が広く、法律や哲学なども扱うさまざまな「〇〇社会学」がありました。1年次では「社会学原論」をはじめ、社会学の基礎的な理論や調査法などを学びますが、私は「文化の社会理論」という授業で文化人類学にも触れました。文化人類学は、社会学とは異なった学問の成り立ちで遠い国の民族などを調査、研究することが多く、さらにその「他文化」を通して「自文化」を相対化します。この授業で学んだことがその後、レポートを書く際などに多くのインスピレーションをもたらしてくれました。
橋本
私は、授業がきっかけで興味を持つようになったのが「メディアと災害の関わり」でした。その授業は「メディア素養論」で、メディアの歴史や変遷を体系的に学ぶことができる、まさに「メディア社会学科らしい」内容でした。担当の先生が、東日本大震災の被災地に継続的に足を運んでいらしていたこともあり、メディアと災害の関係について、現場の視点を交えながら深く知ることができました。この関心から、立教大学のプログラム「陸前高田プロジェクト」という、津波の跡地を巡るツアーに参加しました。教室での学びが行動へと発展し、実際に被災地を訪れ、自分の目で現場を見て感じる機会につながりました。
米田
社会学部に入って以来、物事を深く考えるおもしろさを知りました。「社会認識と哲学」という授業で哲学との出会いがあってよかったと思っています。ひとつの物事について深く考え、周りと語り合うような体験は高校まではありませんでした。頭の中にあることを言語化するのが難しくて四苦八苦したり、他者と自分の考えを比べてみたり。多様な人の考えや感じ方に強い関心を抱き、たくさんの人と語り合うことが増えました。さまざまな哲学者の本も読むようになりました。
野﨑
社会学部の授業を受けていると、必ず耳にする「フランクフルト学派」という言葉があります。フランクフルト学派は、1920年代ドイツのフランクフルトを中心に活動していた思想家集団のことです。「社会学理論」では、そのメンバーでもあるアドルノやベンヤミンを中心に一歩進んだ学びができました。理論自体はとても難解でしたが、彼らがどのような立場、境遇であったのか人生を含めてその思想を考えることができた体験でした。それなりに知識もついてきていた3年次だったので、社会学の歴史や学びの奥深さをあらためて感じました。
田邉
「入学してから自分の専門領域を見つけよう」というスタンスだった私が、自分の進む道に出会ったのが「社会調査演習」で学んだデータ分析でした。「数字で社会を語れたらかっこいい」という憧れでこの授業に飛び込みましたが、大学生活でもっとも冷や汗をかき、脳みそを使った授業でした。そして格闘の末に「データという武器」を手に入れることができました。先行研究のレビューから調査設計、分析、考察まで一連のプロセスを徹底的に勉強し、楽ではありませんでしたが、ここで鍛えられたスキルは卒業論文の核となりました。
「社会調査士」資格取得の条件も達成して、最終的には調査会社への就職という進路まで切り拓いてくれたのがこのデータ分析でした。例えば喫煙率と幸福度には相関があるのではないか、などの仮説を立てて、実際にデータ分析によって相関を測ってみたらすごくおもしろくなって「これだ!」という感覚がありました。
米田
私は、2年次のときに国際コースへ飛び込みました。入学のときは、好奇心と探究心だけが旺盛で、まずは自分の興味関心分野を探そうと考えていました。当時、とくに英語が得意だったわけではなく、むしろ私は英語力に自信を持てなかったからこそチャレンジしてみよう!という気持ちが湧いてきました。半ば勢いもありましたが、日々英語に触れなければいけない環境に身を置こうと決意し、国際社会コースへの編入を決意して選考に応募し、2年次から国際社会コースへ編入しました。
橋本
国際コースに編入したあとは、大変でしたか?
米田
当たり前ですが、国際コースですから留学生に囲まれて、先生もネイティブという状況の中、プレゼンテーションやディスカッションを英語で行うわけです。社会問題をテーマに英語でやりとりをしなければならず、単語が難しくて、留学生たちにどうやって伝えようかととても苦労しました。しんどいなと思いながらも、自分が懸命に話せばみんなが聞きとろうとして、助けてくれました。温かく見守られながら、何もできないところからTOEIC 875点までとれるようになりました。自分でも驚いています。何とか必死に食いついていった、大学生活でいちばんのチャレンジでした。大手旅行代理店に就職が決まったので、英語も活かせればいいなと思っています。
橋本
私もK-POPが好きで、言語を学ぶのが好きだったので、韓国語は中級まで勉強しました。韓国人の先生のゼミにも所属し、ゼミ合宿で韓国に行って現地の人と交流をしたり、現地のテレビ局や撮影スタジオを見学することができました。好きなことを追求して学びにできたことは大きかったです。とにかく社会学部は自由度が高いので、卒論も自由なテーマで書くことができました。私は、美容整形が若者の間で“特別なこと”から“身近な選択”へと変わってきた理由を、社会の側面から考察しました。
野﨑
私はもともと博物館に興味があり、学芸員課程も履修していました。ゼミに入るときの課題で「手触り」についてエッセイを書いたこともあり、触覚や博物館における展示の解釈などをテーマとして卒論を執筆しました。視覚障害者も鑑賞できるように、すべての展示物を触ることができる博物館があり、私はそこで調査をさせていただき、来館者やスタッフにインタビューを行いました。フィールドワークで、普段であれば関わることのない人たちに出会い、直接会話ができたことは貴重な経験となりました。大学における学びの集大成として卒論を書き上げることは簡単ではありませんでしたが、ある種の「作品」を完成させることができたのは、今後に活きてくると思います。
田邉
私は家族社会学を研究するゼミに所属していて、卒論は男性の家事参加をテーマにしました。「架空の妻」を設定し「どのような妻なら夫は家事に参加する/しないのか」を分析しました。結論を簡単に言うと、夫が家事を手伝おうと思う要因としては、単純な経済力ではなく、妻の「正社員」という地位が関係しており、妻が「非正規社員」の場合はあまり手伝おうと思わない。つまり、妻に時間的余裕があるかないかでそれは変わるのではないか、という結論になりました。
授業やゼミなどの学びを通して、社会の問題は一見、当事者の性格や関係性の問題に思えますが「家族との葛藤」などでさえ、実はその背後には構造的な「社会的な問題」があると学びました。私はこの「社会学的想像力」という一生ものの視座を得たことで、物事の解像度が劇的に上がりました。さらに、私たちが陥りがちな「思い込み」を、客観的な「データ分析」によって正す技術も身につけました。個人の人生と社会を結びつける「想像力」と、それを実証する「技術」。この両方を得られたことがこの4年間で最大の財産です。
野﨑
そうですね。自分が悩んでいることについても、自分の責任のほかに社会のほうにも欠陥があるのではないかという、別の視点を持つことができたことは自分も大きかったです。
橋本
私は社会学を学んで、他人に対して寛容になりました。「何かのせい」「誰かのせい」と決めつける前に、そのバックグラウンドがあるのかもしれない、仕方がない理由があるのではないかと考えるようになりました。物事に対してのかみ砕き方が変わりました。あとは、自分と自分の身に起こっていることを分けて考えられるようになり、気持ちの浮き沈みがなくなったと思います。
田邉
感情と自分が置かれている環境を分けて考えられる、ということですね?
橋本
そうです。4年間をかけてとても成長した気がします。
野﨑
教科書には「他者の合理性」とも書いていました。自分から見たら、その人はなぜそのようなことをするのだろうと思っても、それは何かの合理的な考えによって行われている。社会学や文化人類学を学ぶと、自分の視点からではなくて、他者の視点から考えることも大事にしている学問だからこそ、他者に対して寛容になれるのかなとも思います。
米田
社会で起こっていることはすべて社会学、ですよね。物事は正解がないことのほうが多いと思うので、そこを考える力、こうなのではないかと仮説を立てて立証していく力は、社会に出たら間違いなく必要なスキルで、それは生きる力なのだと思います。社会学部でそれが身につきました。

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