社会学部社会学科の渡辺 健吾さんにインタビュー

社会学科 渡辺 健吾

2021/11/03

在学生

OVERVIEW

社会学部社会学科の渡辺 健吾さんに、立教大学での学びについて語っていただきました。

社会学の視点から物事を複眼的にとらえ、世界がいっきに広がる

社会学は生きていくうえで必要な視点を養う学問

高校3年生のとき、私は大学入学後に何を学んだらよいのかわからず悩んでいました。塾の先生に相談したところ、社会学はこれから世の中で生きていくうえで、必要な視点を養うことができる学問であることを聞き、自分に合っていると感じました。さっそく書店で、社会学の入門書を読んだところ、社会学はすそ野の広い分野にわたることを知り、これしかないと思いましたね。
大学は、社会学部のあるところのみを受験。立教大学は、教授陣の専門テーマが多彩で「何でも勉強できる!」と思いました。社会学科を選んだのは、とにかく基本的概念から始めて幅広く学び、4年間をかけて自分の進む道をじっくり見極めたいと考えたからです。

〝ボランティアらしくないボランティア″で被災者との交流を始める

1年次は学ぶことすべてが新鮮でした。とくに印象に残っている「人間の安全保障とNGO」の授業では、アフリカ・ルワンダの内戦を描いた映画を観て、人権や紛争などについて考えました。今まで歴史の中で起こった悲惨なできごとについて、まずは知ることが何よりも大切であり、異国の実情は知る必要性がない、と考えることは危険だと思いました。
また大学生活においては、入学前から、高校生のときに時間がなくてできなかったボランティア活動をやると決めていました。4月には社会学部がサポートする東日本大震災復興支援団体「Frontiers」、そして東日本大震災RDY(立教生ができることをやろう)支援プロジェクトに加入。「東北の被災地に行ってみたい!」と、やる気満々でした。
最初に陸前高田市へ行ったのは、2017年8月の初めごろ。震災から6~7年が経ってもなお、更地が目立っていることに衝撃を受けましたね。私はそこで、被災者の方々とお会いして話をすることから始めました。ご家族を亡くされた方などを前に、こちらはやや緊張し、気を遣って言葉を選んでしまいます。しかし相手の方は初対面の私に、ポジティブに心を開きたくさんのことを話してくださったことに、まず心を打たれました。
その後、3月にも陸前高田市を訪れましたが、活動のコンセプトを繰り返し同じ人に会って話を聞く、対話を中心とした「ボランティアらしくないボランティア」に決めました。一方的に相手の話を聞くのではなく、こちらも自分の生活などの話をする相互理解を行う活動です。東京に戻ってからはブログにあげたり、授業で発表し写真展を行うなどの形にしました。
立場や境遇の違う人の話を聞くことは、とても勉強になり好きでした。そしてこの体験が2~3年次の自主講座の際、インタビューに役立つことにもなりました。

街歩きの中で都市の今と過去を発見する

2年次の「都市社会構造論」では、江戸川橋の神田川沿いなどフィールドに出て、古い地図や資料を参考に調査を行いました。このエリアに坂が多い理由を探ったり、坂の上と下の町の様子を比較して違いを見つけるなど、ふだん意識しないところに目を向け過去を想像しながら歩く、街歩きの楽しさがありました。江戸時代から、大きく変わることなく今に至っている場所もあり、時間軸で街を見ると、何気ない地形や景観から歴史が浮かび上がってくる興味深い体験でした。
ボランティア活動で訪れた陸前高田市において、自分は震災後の景色しか見ていませんでした。しかし、被災者の方々に以前の街の様子をうかがいながら「都市社会構造論」で学んだ視点で見ると、震災前の街のイメージがつきやすかったですね。

自主講座では、復旧した東北・三陸鉄道をテーマに設定する

3年次の「自主講座」では、テーマ設定をして研究を行うにあたり、やはり東北にこだわりました。自分が電車好きだったこともあり、タイムリーな話題として「復旧した三陸鉄道」をテーマに岩手県大槌町へ現地調査に出かけました。ちょうど2019(令和1)年、震災のため運休していたJR山田線(釜石駅~宮古駅間)が三陸鉄道に移管され、南リアス線と北リアス線が1本につながりました。国内最長、総営業距離 163kmの「三陸鉄道リアス線」が全面開通したことで、復興のシンボルとして、また海沿いを走る観光資源として期待されていたのです。
そこで、リアス線がつながる前、途切れていた釜石駅~宮古駅区間を交通システムBRT(バス高速輸送システム)でつなぐという案もあったのですが、結局、鉄道を選択したのはなぜかを探ることにしました。行政としては、NHK朝の連続ドラマ「あまちゃん」でも広く知られる三陸鉄道を最大限に活かし、街に人を呼び込みたいと考えました。しかし地元住民にとっては、日常は車移動が基本で、鉄道を使うことはないなどのギャップがあったのです。私は、実際に大槌駅から宮古駅まで列車に乗り、住民の方々に意見を聞くなど、住民・行政・観光客それぞれの目線から分析し、レポートにまとめました。
実は2年次の自主講座でも、別なテーマ設定で大槌町を訪れていました。しかしこのときはテーマ設定の詰めが甘くて失敗しました。その教訓もあって、3年次はしっかりとテーマを絞り、授業で学んだ社会調査法などの知識も活かして臨んだので、リベンジは成功でした。

被災地の住まいをテーマに地域コミュニティを考える

3年次、野呂ゼミの後半では、5人のグループで「地域コミュニティ」をテーマに共同研究を行いました。都内の衰退した団地近くの、シャッター街となった商店街を、一橋大学の学生がテコ入れをするという事例をとって、地域コミュニティとは何かの概念を、文献をもとに研究。地域コミュニティの定義を行い卒論に備えました。
卒論はふたたび東北が舞台です。「東日本大震災における住まいの再建過程の課題とその要因~恒久的な住宅への移転時期の差~」をテーマに、陸前高田市の仮設住宅を取り上げました。被災地にはたくさんの仮設住宅がありますが、そのころには、仮設住宅から恒久的な住宅への住民移転が完了し、解体が始まっているところもありました。自分の前提は「仮設住宅を出るにしても、住民の間で時間差があるのは問題なのではないか?」でした。つまり、恒久的な住宅になるべく早く移ることが、住民のためではないかと考えたのです。
自分なりに先行研究を行いましたが、やはり現地の人に直接インタビューをしたいと思い、コロナ禍ではありましたができる限りの声を聞きとろうと、2泊3日で陸前高田市へ調査に出かけました。残念ながら仮設住宅の方に話を聞くことはできませんでしたが、飛び込みで近くの店舗などで話を聞いたところ、自分が考えていた前提とは違うことがわかりました。住民個々の家庭の事情が違うので「時間差」は一概に問題とはいえなかったのです。子どもが1年生になるまでに戸建てに移りたい、という家庭もあれば、高齢の独居老人は急ぐ必要はないなどの差があったのです。そして、地域や街の復興が進んでいなければ、住宅だけ早く移しても、満足なコミュニティの再建にはならないこともわかりました。

フィールドに出て話を聞いて初めてわかることがある

社会学部の特徴を最大限に活かし、フィールドに積極的に出て行った結果、自分には「行かなければ、聞いてみなければわからないことがある」の精神が身につきました。動いて、当事者の話を聞いてはじめて、正しい理解を得られることの連続だったからです。
そしてもうひとつの大きな学びは、物事に対する視点です。念願のボランティア活動では、被災者を少なからず「お気の毒な方」だと思っていましたが、その見方は現地で覆されました。皆さんは「今、ここからどうするか」と前を向いていたのです。そして自主講座で三陸鉄道の調査をしたときには、鉄道が住民の日常そのものだろうと思っていましたが、地元ではほとんど乗る人はなく、前述の仮設住宅の件も、自分が考えていた問題点は、実際には問題ではありませんでした。現地へ行く前には、先行研究を行い自分なりの仮説を立てますが、それらはいずれも「自分」の視点でした。

大学が教えてくれた、ひとつの物事を見る複数の視点と話を聞く姿勢

「差別と偏見の社会学」の授業では、障がいを持つ人が未だ特別な目で見られるのは、健常者の生活環境が当たり前として、社会のベースになっているから。この視点は自分にとっては新しい学びでした。「地域コミュニティ」の商店街復興の研究における、地元の人と外部の人の共生や、「都市社会構造論」の街歩きにおける現在と過去の違いを見るなど、「自分の視点」以外の目線に立ち、多角的に物事を考えることこそが社会学であることを痛感しました。ひとつの物事をどの方向から見るのか。見方は複数あり、物事はさまざまな要因が複雑に絡んでいます。まとめることはとても難しく、答えもひとつではありません。しかしその分、自分の世界はいっきに広がりました。
入学前に「何でも勉強できる!」と期待した4年間。それは予想以上でした。立教大学社会学部のこの環境があったからこそ、フル活用して人間や知識の幅を広げることができました。東北・被災地には、これからもライフワークとして通い続けます。お互いのことを話す対話形式のボランティア、インタビューなどを行うフィールド実習は、社会人になっても役立つスキルです。
就職の内定先は、大手不動産会社になりました。大学での経験を活かして、不動産の売買や運用に頭を悩ませている方の話を丁寧に聞き取り、お客様の立場になって考え、お一人ずつに最適な提案をし、それを実現させるため努力したいと思っています。

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