社会学部国際社会コース4年の柏木 彩織さんにインタビュー

国際社会コース 柏木 彩織

2021/11/01

在学生

OVERVIEW

社会学部国際社会コース4年の柏木 彩織さんに、立教大学での学びについて語っていただきました。

自分の興味に素直に従った4年間。学びと経験が財産に

夢だった2年間の留学を叶えるも、帰国を決意

私はとにかく外の世界を知りたい、日本から飛び出したいと高校2年生のときからニュージーランドに留学しました。そして滞在中、ホストファミリーに東日本大震災について聞かれたとき、何も答えることができませんでした。自分は、震災のことはもちろん、日本のことを何も知らずに外ばかりに目が向いていたことに気づかされました。
ニュージーランドで出会った人たちはアイデンティティを持ち、それぞれ自国の文化を発信する力を持っていました。東日本大震災の直前に起きた、カンタベリー地震(ニュージーランド)のこともしっかり教訓にしていました。そして同時に、日本で起きた震災をまるで自分ごとのように心配し、その後の復興にも興味を示していたのです。東日本大震災発災当時、中学一年生であり、東京出身だった当時の私は、震災に向き合い目を向けることもしていなかったことに気がつきました。
そのような経緯で、その後の進路は日本で広く学びたいと思い、留学期間を終えたら帰国することに。大学を選ぶにあたり、留学経験が活かせて、地域社会学やまちづくりに関する分野を学ぶことができ、とくに、プログラムとしてボランティア活動ができる大学を調べていたところ、立教大学社会学部に行きついたのです。東日本大震災の復興支援にも力を入れていることを知り、また、社会学は学びの間口が広いということで、何でも吸収したい私にとってはぴったりだと思いました。

「陸前高田プロジェクト」で、念願の被災地訪問を果たす

1年次の前半までは、「社会学原論」など初めて触れる勉強が新鮮でおもしろかったのですが、周りに流されてなんとなく大学に通っている自分に「このままでいいのか?」と疑問を抱くようになりました。仲間との付き合い方、授業のとり方、発言方法などすべてを見直し「自分らしさを強く持って学びを変えよう」と気持ちを新たにしました。
夏休み前に「とにかく一度、東北の被災地に行かなくては」と、校内の案内板で見つけた4泊5日の「陸前高田プロジェクト」に参加することにしました。これは、米国スタンフォード大学の学生と共同で行うフィールドワーク型の授業です。
内容は、陸前高田市の魅力を外国人観光客に英語でPRする企画で、紙媒体・動画・ポッドキャスト配信の3チームに分かれてコンテンツを制作。私は動画チームになりました。チームメイトのスタンフォード生は日本語がわからず、会話は英語が中心です。3日間の大学内での事前準備も含めて最後の発表まで、1週間ほどをともに過ごしましたが、とにかく楽しい思い出になりました。専攻科目、年齢、国籍の違う人たちが集まり作業を行った体験は「多様性」をビシビシと感じましたし、東北が私のフィールドになるきっかけにもなりました。
念願の被災地訪問でしたが、最初に現地を見たときはショックでした。陸前高田市はまだ更地が多く、まだ盛土の途中でトラックや重機ばかりが目立つ町でした。自分にはまだまだ知らないことがたくさんあることを思い知り、また、英語で世界に被災地の現状をアウトプットしていく必要性を強く感じた経験でした。

社会問題を討論する授業で英語力を磨く

2年次では、留学生と一緒に受講する「Lecture & Discussion on Social Issues」が印象的でした。この授業は最初に Social Issues =社会問題のテーマが提供され、毎回そのテーマについてディスカッションを行うもので、賛成と反対に分かれます。自分の意見にかかわらず、毎回どちらかの立場になって物事を調べたり、考えなければなりません。
英語で行うディスカッションは活発な意見が飛び交うので、緊張の連続でした。2年間留学していたとはいえ、ニュージーランドではそのような機会があまりなかったので、私は議論に自信がなかったのです。しかし、留学生に刺激を受け、回を重ねるごとに積極的に発言できるようになりました。自分の意見や考えを臆することなく英語でアウトプットする大切さを感じましたね。チーム制なのでグループラインで打合せをしたり、意見の発表で劣勢になったとき、仲間がガツンと論理的な意見を言って拍手をもらったりと盛り上がりましたね。
また、プラスチックバッグの問題や gender equality に関してなど、自分自身が気になるテーマも多く、反対に知らなかったテーマに出会うなど発見もたくさんありました。

被災地にこだわり、大槌町の移住者にインタビューを断行

1年次に参加した「陸前高田プロジェクト」以来、東北へ行くことがなくなっていたので、もう一度現地へ行くチャンスがないかと、シラバスで東北関連の授業を探していたところフィールドワークがメインの自主講座があったので、受けることにしました。
個人ごとに深めたいテーマを設定する際、私は、震災をきっかけに大槌町に住む「移住者」の方々を調べてみようと思いました。下調べのとき「大槌町」「移住者」の検索ワードで出てきた人物が、千葉県出身で、震災後に東京の会社を辞めて大槌町に移住し(現在は釜石市)、数々の復興プロジェクトを立ち上げた吉野和也さんという方でした。私がすぐに連絡をとると、快く受け入れてくださり直接お会いすることに。吉野さんの活動や町のお話しを聞き、移住者である吉野さんと地元住民の人々との間で「恩の連鎖」が広がっていることなどを知りました。大学に戻ってからは、自身の問いや現地で感じたことなどを、先生方や学生のみなさんとディスカッションを行う中で「陸前高田プロジェクト」のときとはまた違った、社会学的な視点で、地域に対する興味を深めることができました。

積極的に動くことで人脈を広げ、興味関心も拡大

大槌町から東京に戻って2週間後、大槌町の吉野さんから私に、東京で開催するイベントのレポートを書いてほしいとの依頼があったことには驚きました。それ以来、吉野さんが大槌町のいろいろな人を紹介してくださいました。自然とひとりで町へ行くことができる環境が整い、実際に2~3度、大槌町へ通ううちに知り合いの輪も広がりました。
2年次の春休みには、復興庁のプロジェクト「復興創生インターン」に参加。釜石市の国際交流支援NPO法人で、英語を活かした活動を行うもので、3名のメンバーとともに1ヶ月間、古民家で合宿生活を送りました。仕事は、外国人観光客向けに、2019年ラグビーワールドカップで開催地に選ばれた釜石の市内紹介パンフレットを英語で作成するものでした。
体験することが積み重なると「形にしたい! 書いて伝えたい!」という欲求が出てきたことから、3年次には東京のWEBメディア会社で、長期インターン生として働くことに。学生ながらライターとして取材や執筆を行うようになりました。
そうすると、その分野をもっと勉強したくなります。「メディアジャーナリズム実習( 基礎・応用)」では、メディア(新聞)のセオリーに従った文章を書くスキルを学びました。メディアの文章は、限られた文字数で、起承転結をつけて的確に物事を伝えなければなりません。先生は、毎回丁寧に添削して戻してくださり、ひとつのスキルを身につける意味においては履修してよかったと思います。先生は、時事通信社の解説委員の方で、沖縄支局、ワシントン支局などを歴任され経験値が非常に高い方なのでお話がとても面白く、現場の話はとくに引き込まれましたね。

研究対象のフィールドが自分の居場所になった

3年次の野呂ゼミは「都市空間とまちづくりの社会学」がテーマです。先生は学生それぞれを尊重してくださいます。私が熱心に通った東北・被災地への想いを、卒論という形に集約できたのは、先生とテーマ設定の相談をしているとき「サードプレイス」というキーワードをいただいたお陰です。
自分の興味の原点は海外に行くことからスタートし、東北・被災地というフィールドに出会い、いろいろな経験を通してたくさんの出会いがありました。東京からいきなり訪ねた私を温かく迎えてくださった皆さんは、絶望を乗り越え、前を向く人々でした。それぞれにストーリーがあり、自身で人生を変え、他人の人生をも変えてくれる人たちを私は何人も見てきました。そこは私にとって特別な場所であり、帰るべき居場所になっていました。とくに私が釜石市で「復興創生インターン」をしていたとき、居場所=サードプレイスだったのが市内にある銭湯でした。

サードプレイスとしての銭湯をテーマに卒論を執筆

私は、番台に座っていたおばあちゃん目当てで、日々の疲れやストレスを癒してもらうためその銭湯に通っていました。そこは利用者が少なく、経営的には疲弊していました。しかし銭湯は、機能的価値だけでなく、社会的価値を多く持っていると私は考えます。その社会的価値が「サードプレイス」ではないかという定義づけを行うべく「銭湯の生み出す社会的価値〜サードプレイスの担い手の視点から〜」と題した卒論をまとめました。立教卒で気仙沼に移住し、漁師さんのための銭湯を経営している先輩にインタビューを行ったり、行政の支援の在り方を調査するなど、銭湯はどうすれば経営を続けていけるか、経営者の視点から持続可能性を探りました。

「自分の興味に素直に従うこと」を教えてくれた立教大学

私は国際社会コースでありながら、東北漬けの学生生活でした。しかし結局そこは、人が温かく、東京との文化や言葉の違いもあり、私にとってはニュージーランドと同じ「外国」でした。被災地のことを知りたくて「教えてください!」とぐっと中へと入って行ったとき、こんなにも積極的になって、笑って泣いて心が動いて、見聞きしたことを伝えなければと使命感に駆られて動くことに、自分自身がいちばん驚きました。4年間の大切な学びのきっかけや環境を与えてくれたのは、やはり立教大学です。大学にいちばん教えられたことは「自分の興味に素直に従うこと」。私は素直に従った結果、自分の可能性を爆発させることができたと思っています。

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