社会学部現代文化学科4年の荒川 誓那さんにインタビュー

現代文化学科 荒川 誓那

2022/05/06

在学生

OVERVIEW

社会学部現代文化学科4年の荒川 誓那さんに、立教大学での学びについて語っていただきました。

大学は自らが選んで努力する場所 自分でレールを敷いて道をつくる

「社会学原論」は2~4年次にかけても 役立つ社会学の基礎

大学入学にあたり学部について調べていた際、社会学は社会のあらゆることを対象に幅広く学ぶ学問だと知りました。当時はいろいろな学問を学んでみたいと思っていたので、私にぴったりだと思い志望しました。そして現代文化学科であれば、現代社会がどのように成り立っているのかなどを、知ることができるのではないかと思いました。

入学時、社会学がどのような学問なのかは理解していませんでした。それが理解できたのは1年次の必修「社会学原論1」でふれた『自殺論』です。私は、心理学のように個々の自殺の理由について述べるのかと思っていましたがそうではなく、自殺とは社会問題だというのです。自殺は個人的理由で起こるという一見、当たり前に思えることを疑って、さまざまな角度からその事象を研究することが社会学なのだと学びました。

2~4年次と進むうちに、1年次の「社会学原論」を思い出し、学習内容が結びつくことがたびたびあったので、1年次では難しいかもしれませんが、とても重要な授業だったとあとからより理解することができました。私は、中学のときから大の読書好きで「社会学原論」のように難しい文献を読むことも苦痛でなかったことは幸いでしたね。

インドネシアで体験した2週間のボランティア活動

1年次で思い出に残っているのは、夏休みに2週間、インドネシアのジョグジャカルタで体験した「RSL-プロジェクト・プランニング」です。その中で、日本財団学生ボランティアセンターの「Alternative Leadership Program」に参加しました。

これは座学だけではなく実際にボランティア活動を行い、その活動を通じて現代社会が抱える諸課題への理解と関心を深めることを目標とするものです。日本人10人とインドネシア人6人で活動をともにしたのですが、仲間たちとの会話はすべて英語。田舎の村でのホームステイでは英語が通じなかったので、子どもたちやおじさんたちと身振り手振りでコミュニケーションをするなど貴重な経験ができました。

貧困やゴミ問題などの世界規模の社会問題を間近で見て、そこから私たちの社会的責任とは何かを考えるきっかけを得ることができましたし、貧困層の子どもたちに勉強の楽しさを教える活動を行いましたが、そのときに、言葉が通じない中でも、彼らが何を考え生きているのかを知ることができました。

しかし、最も学んだことといえば、イスラム教への正しい理解です。インドネシアは80%以上の人たちがイスラム教徒です。実際に現地へ行く前の私は、ニュースなどで見聞きした情報のイメージから、正直、2週間安全に過ごせるのかと不安でした。しかし、現地のイスラム教徒の人々と一緒にお祈りに参加して仲良くなったり、イスラム教の祭礼「イード・アル=アドハー」に参加するなどした結果、その儀式は感動的であり、人々も善良で温かく、ボランティア活動というよりも自分が未知の体験をした2週間でした。

「社会調査法3」「情報処理2」を経て 統計の深い知識を身につける

2年次で自分の興味関心、就職にまでつながるきっかけになったのは、春学期の必修科目「社会調査法3」でした。授業の中で、社会科学の統計分析に広く使用されている「SPSS」という統計解析ソフトを使う機会がありました。配られたデータを自分の好きなテーマに沿って仮説を立てて分析し、それを検証するという授業です。「SPSS」は、研究対象の量的な側面に着目し調査する手法・量的調査で使用する以外はあまりふれることはないものだったので、大学でふれることができたのはよい経験でした。

そして、2年の終わりごろ後輩に誘われて、大学外の大学生限定のプログラミング教室に入会したところ、プログラミングのおもしろさに目覚めました。プログラミングが義務教育で必修になったことを知り、世の中でIT化が進んでいく状況においては、プログラミングを知っておくこともよいと考えたこともあります。

そして3年次になり、社会学部にプログラミングを学べる授業があると知り「情報処理2(アプリケーション)」を受けました。2年次の「社会調査法3」で使ったような統計ツールを使用せずに、自分でプログラミングを行い分析します。オープンソースで運営されているプログラミング言語「Python」を使って基礎を身につけ、自然言語処理やネットワーク分析による、テキストの量的分析の手法を学ぶ授業です。自分で慣れないコードを書くことはとても新鮮であり大変でしたが、統計の深い知識を身につけることができました。

この授業で学んだことはテキストの分析だったのですが、統計としてよく使うのは数値分析なので、受講後には自分で数値の分析を学ぼうと思うきっかけになりましたね。また、4年次の卒論執筆の際、この授業の経験がとても活きたので、授業の選択は成功したと思います。

文献批判の視点を持ち、考えるプロセスを学ぶ

ゼミは貞包先生の「消費社会論」を選びました。具体的な場所で、どのような人が何を買うのか、どのような社会現象が起きているのかを研究しています。この世のほとんどが消費と絡んでいるので、日常生活の物事がすべてテーマになるおもしろさがあります。

3~4年次になると、1~2年次までの授業とは深さがまったく違いましたね。3年次のころのゼミでも文献講読は行ったのですが、4年次になってからのほうが、文献の難しさが増しました。それまでは、内容を理解して要約し、自分の意見を少しだけ入れる程度でしたが、4年次になるとそれだけでなく、その文献に対して当たり前を疑い、かつ批判的視点を加えることがメインになったので、これまでの読み方とは違いとても苦戦しました。

例えば、ゼミ論文で高級住宅街をテーマにしたことがあるのですが、最初は高級住宅街といえば「見栄えがいい」「高級そう」などぼんやりとした当たり前のことしか出てこなかったのですが「なぜ高級住宅街は高台に多いのか」という観点から田園調布などの歴史を調べると、最初は別荘地から住宅街になった、関東大震災を経て高台は安全性が高かった、などの経緯が見えてきました。そこからまた「それは本当なのか」「文献は本当に正しいのか」というように、文献批判の視点を持って考え、また「理由はほかにないか」と発展してどんどん深掘りしていくと、そのプロセスをから見えてくるものがあることを知りました。

卒論は自分が努力した証の3万2000文字 4年を通して社会を見る目が養われた

卒論は、それまで自分は使ったことがなかった、マッチングアプリをとり上げ「マッチングアプリの利用の変化」をテーマにしました。友だちとの会話の中で、マッチングアプリの話題が頻繁に登場するようになったので「どうしてだろう?」と疑問がわいてきたからです。私は単純に、以前より安全性が担保されるようになり、コロナ禍でリアルな出会いが減ったことで、アプリの利用者が増えたのだと考えました。

まずは、不特定多数の人との出会い方の歴史を調べるため文献を読みました。マッチングアプリに関する研究はほとんどなく、恋愛や家族社会学などの文献を探すことが大変で、指導教員に相談したところ、いろいろな本を薦めてくださったのでそれらを読みました。恋愛観などを引き出す10項目の質問からなるアンケートを作成して分析すると、マッチングアプリ利用者には男女ともに、コロナ禍は関係なく結婚を目的とする人が多いなど、意外と大真面目に使っていることがわかりました。

次に、マッチングアプリ利用者に協力を求め、インタビューを行いました。検証の結果、やはりコロナ禍や安全性の向上などはあまり関係がないことがわかりました。

卒論では自ら問いを立て、それに対する文献をたくさん読み、量的調査と質的調査を行い、それを分析して結論を出すことはとても大変でした。正直、学生の卒論は世界の研究を舞台に考えた場合、学術的価値はないと思います。しかし、自分にとっては大学4年間の学びの集大成であり、自分のために頑張った証です。インプットメインで学んでいた調査方法を実際に使い、それをまとめてアウトプットする作業も含め、卒業論文を書く過程で4年間の学びを活かすことができました。

「自分で何かを生みだす」成功体験 その好循環を積み重ねる

私は、社会学部の授業から統計分析を知り、それが発展してプログラミングに興味を持つようになりました。その楽しさは「あったらいいなと思うサービスを形にできること」だと思います。社会学的ではないかもしれませんが、私にとっては社会学部だったからこそできた学びでした。

プログラミングなんて、自分にはそれまで縁がなく絶対にできないと思っていたことだったのに、いざやってみると出来たのです。「自分で何かを生み出す」その成功体験は大きなものでした。そうするとほかのものにも挑戦したくなり、マーケティングやTOEICの勉強もはじめることにつながりました。その効果があってか、就職先は外資系IT企業に決まりました。業務の半分は英語で行い、社員の3割が外国人という環境です。

私がIT分野を志望したのは、エンジニアになりたかったからではなく、人と話すことがとても好きなので、IT企業であれば、幅広い業界に携わってたくさんのお客さんと出会うことができる。そして、社会をよりよいものにできるのではないかと思ったからです。内定先企業は、ITコンサルティングの中でも上流部分を担う仕事なので、クライアントと対話することで求める真のニーズを引き出し、人に寄り添ったサービスを提供していきたいと考えています。

このような考え方ができたのは、やはり社会学部で多種多様なカリキュラムが展開されていること、学んだ物事を様々な角度から見る視点を持てたことが大きかったと考えています。

高校生までは、一定のカリキュラムと決められた枠内での行動でした。しかし大学生になると、そして社会に出ると「自分のものさし」を作る必要があります。誰かの敷いたレールは無くなり、自分でレールを敷いていく。そのような精神を養うのが、大学生のやるべきことだと思っています。自分のやりたいことを見つけるためには「一生懸命に」「熱中」することです。中途半端では何も生まれません。私はさまざまなことに挑戦して4年間という時間を使い倒したと思っています。

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