社会学部国際社会コース(現代文化学科所属)4年の河野 勇作さんにインタビュー

国際社会コース(現代文化学科所属) 河野 勇作

2022/05/04

在学生

OVERVIEW

社会学部国際社会コース(現代文化学科所属)4年の河野 勇作さんに、立教大学での学びについて語っていただきました。

知的好奇心を満たす「自由の学府」 自分の進むべき道を見つけた充実の4年間

リベラルアーツを謳う自由な空気と キャンパスの綺麗さに惹かれた

私が立教大学社会学部を選んだのは、中学生のころに目にした「国際NGOプラン・インターナショナル」の広告や、「Save the Children」の動画のことが忘れられず「開発学」、あるいは「平和研究」を学びたいと考えていたからです。

社会という幅広い範囲を扱う社会学部は、のちに興味が変化した場合に、違う分野を学ぶこともできるだろうと思ったことも理由です。また、立教はリベラルアーツを前面に押し出し「自由の学府」が校風です。そしてキャンパスが綺麗なことなどが理由にあげられますね。入学時は漠然と国連で働くことをイメージしていたので、2年次で英語力強化のために国際社会コースへ進みました。

マルチカルチュラルな体験で 思考力・行動力・英語力を鍛える

1年次ではディスカッション、ディベート、プレゼンテーションなど基本的なアカデミックスキルを英語で身につける訓練からまずはスタートしました。しかし、もっとも強烈だったのは「GL101(グローバル・リーダーシップ・プログラム)」でした。これは、全学部共通カリキュラム1~4年生まで参加ができる講座で、一般企業から与えられた課題をもとに、半期をかけてアイデアをグループで練っていくプログラムです。私のチームは4名でしたがチームビルディングに苦労しつつ、授業以外にも何度も集まり、かなりの時間をかけてグループワークを進めたので強く記憶に残っています。何度も繰り返したブレインストーミングやアイデアのブラッシュアップに難儀しました。ゼロからアイデアを出してつくりあげ、行き詰まったらまたゼロに戻るなど、1年生はこの「GL101」がとても大変であり、やりがいがありました。

このリーダーシップ学習を通じて、生き方についても考えるようになりましたね。リーダーシップといっても何かの組織の長になるため、というわけではなく、授業でいちばん最初に手を挙げて発言する、グループの円滑な雰囲気のために率先して自分から何かをする、などといったようなことが出来るようになりました。

また1年次の夏休み1ヵ月間の短期留学体験「ビクトリア夏ESL (イングリッシュ・セカンド・ランゲージ)2」では、カナダのブリティッシュコロンビア州のビクトリアで海外生活を経験しました。寮でもクラスでも、さまざまな国の学生たちと過ごし、日本のスタイルとはまったく違った英語圏スタイルの生活・授業を体験したことで最初はカルチャーショックを受けましたが、負けてはいられないと積極的に心を開くようにしました。
この短期留学をきっかけに、海外で過ごす時間がとても気に入って、もっといろいろな文化や価値観にふれたいと思ったため、2年生の夏には、バックパッカーとしてひとりで40日間ヨーロッパを周りましたね。

また、講義ではありませんが、1年の夏休みには大学キリスト教教育研究所主催「沖縄フィールドトリップ」にも参加しました。フィールド実習を初めて体験したプログラムで、辺野古埋め立て反対運動で座り込みをしている人にお話を聞いたり、実際に機動隊員たちともみあっている場を目撃したりしました。また沖縄戦の戦争経験者の方のお話を聞き、沖縄の過去の歴史をあらためて知るなど、教室で授業を受けているだけでは分からなかったことを目の前にし、フィールドに出ることの重要性を学びました。

留学生に圧倒され「負けられない!」と奮起した

2年次からは国際社会コースに選抜され、英語での授業が増えました。このコースならではの授業「Reading Sociology in English」「Introduction to Sociology」など、毎週膨大な量の課題をこなしつつ、ディスカッションやプレゼンテーションを行うイングリッシュ・スタイルの授業や、専門的な内容を留学生とともに受ける少人数・参加型の英語学習や研究に慣れていきました。ハイレベルでハイペース、ある意味で競争の激しい授業をいくつも受けたことで、苦労も多くありましたが精神面も鍛えられましたね。

とにかく留学生たちの知識量と、積極性には驚きでした。理論はペラペラ出てくるし、自国・他国の現状はこうだけれど、日本はどうなの?とすぐ質問攻めにあいます。手を抜くと逆に悪目立ちするほどで、彼らに引っ張られ「負けられない!」と努力ができました。空き時間ができると、すぐさま図書館に入り浸りの毎日でしたね。この頃に受けた授業は、将来の進路方針にも影響していますし、このときの経験が卒論執筆にすべて生かされました。

英語力に関しては、幼いころ、近所の英語教室に少し通ったくらいでした。あとは通っていた高校の授業に触発され、ニュースを見るときは今も世界の通信局のWEBサイトなどすべて英語で読んでいます。国際紛争や支援などをアカデミックに勉強する場合、どうしても日本語だと限界があります。自分が目指す世界に飛び込むには、まずは英語力。国際社会コースは、国際とついているだけに国際的な問題にもふれることができますし、学科の枠を越えていろいろな授業を受けることもできます。実際、自分の興味のあることがかたまっていましたし、英語を磨くこともできたので自分にとっては願ったり叶ったりのコースでした。

研究領域を「難民と人道支援」に決める

そして2年次では、自分の方向性を決定づける授業に出会うことができました。それは「人間の安全保障とNGO」です。人道支援・地雷対策の専門家であり、立教大学社会学部の教授でもある、長有紀枝先生の講義を受けました。私は長先生の「国家の安全保障だけでなく、人間の安全保障にも目を向けるべき」という話を聞くうちに、「難民」を軸にして詳しく探ることで、その周辺にある社会問題などさまざまなものが見えてくるのではないかと考えました。この講義をきっかけに、人間が生きるうえでの重要な概念にふれ、難民支援の道を志すことに心を決めました。

そして、自分の学びたい方向を決定づけた授業がもうひとつあります。それは、こちらも人道支援の専門家(NGOスタッフ)の講義「ソリューション・アプローチC」と、難民研究の専門家(UNHCR・国連難民高等弁務官事務所職員)による講義「ソリューション・アプローチG」でした。少人数・参加型授業で、留学生を交えた英語でのグループワークもやりがいがありました。今ある問題を知り、実現可能な解決策やどのような人道支援を行うかをみんなで考えました。紛争解決や難民支援の困難を思い知らされましたが、結果的にやはり私は「難民」と「人道支援」こそが、自分の勉強したいことなのだとはっきりとわかりました。

目指す道の分野のほか アートから現代文化まで幅広く学ぶ

方向性が見えてきた3年次。ふたつの「ソリューション アプローチ」シリーズの講義は、ますます自分の目指す道が見えてくるような講義でした。ひとつは、強制移動の専門家(UNHCR)による集中講義。もうひとつは、紛争分野の専門家(元国連職員)による少人数・参加型授業で、UN OCHA(国際連合人道問題調整事務所)の立場から包括的な難民支援計画を立案するというグループワークがチャレンジングであり、非常によい経験となりました。実際に強制移動の現場や国連本部で働いていた職員の方々のお話だったので、将来の働き方の参考になりました。

そして、自分が入学のときにやりたかったこと、思い描いていた「社会開発論」の授業もありました。人道支援や紛争解決、平和構築といった他の分野にも大いに通ずるものがあり、意義深い内容であったとともに、入学当初の目標が達成できてとても満足し、立教大学社会学部に入ってよかったと思いましたね。

ほかにも「COVIDとアート・文化」「BLM(ブラック・ライヴズ・マター)の問題の所在」「アートの思想と社会批判」などをテーマに考えた「現代文化論」や、実際にメディアの世界で働く方をお招きし、学生とともにオンライン上でインタラクティブかつ活発な議論が行われた「メディアとジェンダー」。この授業も非常にやりがいがあり思い出深く、現在の問題をリアルタイムに追い、考えてゆくことの面白さにあらためて気づかされました。

ゼミ研究で私自身のアイデンティティを見つめ直す

ゼミを選ぶとき、難民や人道支援、紛争といったトピックをメインに研究しているところがなかったので「多文化社会や移民」を研究領域とする、石井先生のゼミで「ハーフのアイデンティティと日本社会のまなざし」をテーマにしました。

日本では「日本人」以外の人々は、皆同一に「外国人」と呼ばれます。また、日本国籍を持っていても外見などがそう見えれば「外国人」と分類されたり、日本国籍を放棄した日本出身者が「日本人」と報じられたり。以前からこれらの観念に違和感を抱いており、はたしてミックス(ハーフ)の人たちは「日本人/外国人」二元論の日本社会をどう生きているのかについて興味があったからです。この研究では、日本に生きるさまざまなバックグラウンドを持つ人たちにインタビューを行いました。

日本は、「国籍唯一の原則」に立脚する法制度があります。「国籍-戸籍-本籍」という日本固有の血統主義的観念、「内/外」の概念が強固な共同体意識を形成しています。自分が「何人」なのか、「母国」はどこなのかといった意識は、時間が経つにつれて変化しうることがわかりました。例えば、幼少期に“自分は中国人”と言っていた人が、大人になり日本人を自認するようになるなどです。また、「母国」意識は必ずしもひとつになるとは限らず、「母国はドイツと日本の両方で、自分はドイツ人でもあり日本人でもある」ととらえる人もいます。

この研究を通して「ハーフ」個人のアイデンティティは流動的で複数性を有していることを学びました。この点は国の枠を越えたトランスナショナルなケースに限らず、「自分は何者なのか」を問うアイデンティティ全般に当てはまるため、私自身のアイデンティティを見つめ直すきっかけともなりました。

自分の研究領域「難民と人道支援」をテーマに 卒論を仕上げる

4年次の卒業論文でとり組んだのは「レバノンのシリア難民キャンプ政策とその背景」です。
2年次の「ソリューション・アプローチC」、人道支援の講義で調べたトピックでした。そのときに引っかかっていて、もっと知りたい、突き詰めたいと思っていた「忘れられた難民」=レバノンのシリア難民を卒論のテーマにしました。2011年、シリア紛争が勃発し、多数のシリア人が周辺国へ避難。レバノンにも100万人を超えるシリア難民が流入し、人口の25%を難民が占める状態になりました。難民受入れ国では、難民の管理と支援の提供を円滑にするべくキャンプを設置するのが一般的であるのに対して、レバノン政府はシリア難民キャンプの設置を認めず、難民たちが放置されている状態です。その背景を探りました。

困ったのは、論文として成立させるためその根幹となる「なぜ、キャンプを設置しないのか」という問いに対して、どのような切り口で書き進めればよいのか絞りきれず、石井先生から「国際政治・難民と市民権・人道支援・歴史的背景のうちの、いずれかの切り口を」と、アドバイスを受けました。私はレバノンに現地調査へ出かける気満々でしたが、やはりコロナ禍のため断念。そもそも、このトピックに関する文献はほとんどなく、資料を探して取り寄せたり、国連やNGOの報告書をインターネットで探したりなど、手当たり次第に集めました。もちろんすべて英語です。もっとも苦労したことは、英語で頭に入れた情報を日本語に翻訳して書き記すことでした。文章の組み立て方、両言語間での意味の齟齬をなくす作業などに骨を折りました。

研究の枠組みをゼロから組み立て、論文にまとめる作業を通して、アカデミックな問題意識の思考法が鍛えられました。また、たくさんの資料や文献を探し当て、読み漁り、必要な部分を抽出する作業は、将来的に修士・博士課程に進むうえでよいトレーニングになりました。

将来はぜひINGOs職員・国連職員として世界で働きたい

立教は「自由の学府」と謳うだけあり、高度な自由が認められているのが魅力です。関心のある分野を自由に決めて、自分の学びを究めることはもちろん、全学共通科目や他学部開講科目も履修できるためさまざまな分野やテーマにふれることができ、知的好奇心を満たすことができました。

将来はぜひINGOs(国際非政府組織)に就職して難民支援に携わりたいと考えています。夢を叶えるためには、せっかく大学で鍛えた英語力を落とさないように勉強を続け、機が熟すのを待たなければなりません。長期的には国外での修士・博士取得や国連専門職への挑戦も想定しています。現場での支援活動と、UN OCHAなどでの計画立案など「虫の目」と「鳥の目」、両方の視点を持って仕事ができればと思っています。

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