社会学部社会学科4年の野中 麻優さんにインタビュー

社会学科 野中 麻優

2022/05/07

在学生

OVERVIEW

社会学部社会学科4年の野中 麻優さんに、立教大学での学びについて語っていただきました。

4年間で培った、自ら多角的に物事を考える力を活かし 社会で活躍していきたい

フレキシブルに方向性を変えられる 社会学が自分に合っていると思った

高校生のときに、子どもの貧困に関する本を読み、日本の子どもの貧困率の高さに衝撃を受けました。もともとは、経済学部や法学部への進学を考えていましたが、この本をきっかけに、格差問題とその改善方法を中心に、社会問題についてもっと学びたいという気持ちが強くなりました。そこで、立教大学の学部説明会に参加した際、社会学部があることを知り自分にぴったりだと思いました。キャンパスのキレイさ、雰囲気のよさも印象的でした。

また、社会学は何でも研究対象とすることができる学問であるため、入学後に学びたいことが変わっても柔軟に対応でき、自分がそのときにやりたいことができる点にも魅力を感じました。

1年次の科目が3~4年次になって 少しずつ活かされていく

1年次で最初に格差問題に関する事例にふれることができたのは「青年期の社会学」の授業でした。社会的格差の拡大や失業率の高さにより、青年層は厳しい状況に置かれているにも関わらず、生活満足度は高く幸福感も強まる傾向が見られる、という一見矛盾している状況を、数多くの資料を用いて解き明かしていく過程が非常におもしろかったです。青年期には大学生も含まれることから、自身にも深く関係する内容だったので印象に残っています。

この授業を受けるまで私は、社会的格差の拡大や失業率の高さによって、人々の生活満足度は下がり、幸福感も低くなるのが当然だろうと考えていました。しかし、実際のデータを見てみるとそれは異なることが分かり、思い込みで物事を考えることの危険性に気がつきました。また、何か自分の意見を述べるときには調査データや先行研究の知見など根拠が必要で、論理的でなければならないこともあらためて実感し、さらに授業全体を通して、問題設定の立て方や、どのようにデータを組み合わせて最終的な結論を導いていくのか、という流れを学びました。

3~4年次になってから気づいたことですが、1年次で学ぶ「社会調査法」や「社会学原論」などは、そのときは漠然としていて深く理解していなかったですね。「社会調査法」は座学で学んだだけでしたが、4年次の卒論で実際にインタビュー調査や参与観察、ドキュメント分析など進めていくと、1年次で学んだことが後々活かされてくることを実感しました。「あ、このことだったのか~」と教科書を読み直してみたり、3~4年次はそういうことが多くなりましたね。

レジュメの作り方を学び、ディスカッションを行った 2年次のゼミ活動

2年次春から「専門演習1」のゼミが選べたので、入学当初から自身が学びたいと考えていた、教育格差をテーマにするゼミを選びました。

このゼミでは、授業でとり扱う文献の章ごとに担当者を決め、その担当者がレジュメをつくり、授業で発表するという形式でした。そこで、内容を知らない人が見ても分かりやすいレジュメの作り方を学びました。これは3~4年次のゼミでも活かすことができました。

また、学生が文献を読んで考えたテーマや、興味のある新聞記事を持ち寄って、ディスカッションを行ったのですが、初めて会った人同士で社会問題について話す作業は、私にとっては難しかったです。遠慮して意見が言えなかったり、空白の時間ができたりしましたが、回を重ねるうちに慣れてきました。これにより、自分の考えや意見をアウトプットする方法を身につけることができました。

このゼミでは、進学率は上がっているとはいえ、裕福な家庭とそうでない家庭の子の間で差が生まれてしまう現実があり、進学率さえ上がればよいというものではないことや、子ども自身の努力だけでは学力格差を埋めることはできないことなど、学べば学ぶほど日本の教育格差の根深さ、解決することの難しさを実感しました。

池袋の子ども食堂でボランティア活動を始める

2年次の6月ごろ、所属していたボランティアサークルのグループメールで、池袋にある子ども食堂のボランティア人員募集の知らせを見て、すぐにやろうと決めました。子ども食堂とは、子どもやその親を中心に地域の人々に対して無料または安価で、栄養のある食事や温かな食卓を提供する場のことです。私は入学したころから機会があればお手伝いをしたいと思っていたのですが、なかなかよい機会がなかったので、その募集は即決で「やるしかない!」でした。

私が参加した子ども食堂は、池袋のカフェを借りて月2回食事を提供するほか、サマーキャンプなど季節のイベントを行ったりもしていました。月にたった2回だけと思われるかもしれませんが、活動の責任者の方は「お母さんたちにとっては、2回だけでも食事や洗い物の心配をしなくていいから気持ちが楽になれる。余裕ができることで、子どもとの団らんの時間をとれて、向き合うことができるという声をいただいているよ」と、教えてくださいました。

また、学内のボランティアセンターに行った際、実際にボランティアを行っている学生の方が話してくださったことも印象深かったですね。それは「ボランティアは金銭が発生しないからこそ、相手と同じ立場に立てる」ということでした。それを頭に入れ、実際に子ども食堂でボランティア活動をしてみると、そこに来るお母さんや子どもたち、ときにはおじいちゃん、おばあちゃんたちと世代を超えていろいろな人たちの目線になり、フラットな立場でお話することができ、とても楽しい体験になりました。

一方で難しさもあります。家庭に問題を抱えている子もいるので、自分からは深く事情を聴かないようにし、相手の話を聴くことに徹することを意識していました。そしてこの活動は、のちに卒論につながることにもなりました。

学習支援をテーマにゼミ論文を完成させた

3年次「専門演習2」でも、興味のある「格差・不平等の社会学」をテーマにした岩間ゼミに所属しました。ゼミでは格差や不平等の問題について「階層(階級)」「ジェンダー」「民族・国籍」の観点から複眼的に分析し、「弱者・マイノリティ」を包摂した社会の可能性を考えていきます。

春学期のゼミで使ったテキスト(小熊英二編著/2019『平成史(完全版)』河出書房新社)は、大著で内容も非常に難しく、専門的な用語も多かったため理解するのに時間がかかり苦労しました。春学期は、ディスカッションの時間が多くあり、そこでひとつのテーマにおいても、多種多様な意見があることに気づき、多角的に物事を考える力が身についたと思います。

また、秋学期には人生初インタビューを含む、1万6000字にも及ぶゼミ論文を書き上げました。教育格差を調べているうちに、学習支援というものがあることを知り、教育格差とどのような関係があるのかをテーマにしました。ちょうど、子ども食堂の責任者の方がボランティアで学習支援の活動をしている方を紹介しくださり、インタビューを申し込むため直接その団体にメールを送りました。

私はインタビュー前、学習支援は学習意欲の向上や、自尊感情の向上につながるなど、子どもにさまざまな肯定的な変化をもたらすことを先行研究より明らかにし、教育格差の改善に大きな影響を与えると考えていました。しかし、実際にお話を伺うと、確かにそのような面もあるかもしれないが、それよりも学習支援の場で支援を受ける子どもたちが「いざとなったらこの人たちを頼りにできる」であるとか「この場で出会った人たちがいるから、がんばろうと思える」など、学力の向上というよりも「人とのつながり」のほうが有意義に感じているのだということがわかりました。

それまで3000~4000文字くらいまでしか文章を書いたことがなかったので、卒論の半分、1万6000文字のゼミ論文は私にしては大作でした。自らインタビューをとることも初めてで不安もありましたが、月に1回ほど進捗状況を授業で発表する際に、先生からフィードバックをいただくことができたので安心して進めることができました。また、ゼミ生同士で自主的に集まり、アドバイスをし合ったり、原稿を添削し合うことでお互いを高め合うことができましたね。

このゼミで、インタビュー調査の意義、文章の組み立て方や先行研究の引用のしかたなど、基本的な論文の書き方を学んだことにより、自信をもって卒業論文にとり組むことができました。

幅広い業種の企業を見て 経理・財務関係の会社の内定を獲得

3年次になると就活もスタートさせつつ、いろいろな企業へインターンシップに行きました。子ども食堂の責任者の方のように、私も一般企業で働きながら社会活動を行っていきたかったので、インターンシップを通して業界業種問わずにいろいろな企業を見て、視野を広げることができました。

4年の6月くらいに親会社やグループ会社の経理や財務を行う会社の内定をいただきました。この会社を受けるとき、私は簿記3級の資格は持っていましたが、経済学部出身などではなく社会学部だったので、分野が違うため不安がありました。しかし、受けてみると学部は関係なかったように思います。問題を見つけて、仮説を立て、自ら考え、答えを出していく一連の流れは、どのような仕事でも活かせると思います。学部によって企業選択の幅を狭めることはないと感じました。

内定先では、業務改善の提案の機会などもあるため、4年間社会学部で培った、自分で考える力、多角的に物事を考える力を活かして仕事にとり組みたいです。会計の知識や簿記の知識はまだあまりありませんが、入社してからも勉強に励むことでいち早くプロフェッショナルとして社会で活躍していきたいです。

4つの研究方法を使い苦労してまとめた卒論 これまでの学びを総動員させた

4年次の総まとめ「卒業論文演習」は、ゼミ論文よりも求められるレベルが高く、あらためて問題設定を立てることの難しさを感じました。テーマは自分がかかわってきた子ども食堂に関する「子ども食堂が母親と子どもに及ぼす影響に関する社会学的研究—ソーシャル・キャピタルの観点から—」です。人とのつながりは、子どもにも母親にもさまざまなよい影響を及ぼすことがこれまでの研究で明らかになっています。卒論で子ども食堂をテーマにするにあたり、ゼミの先生が「ソーシャル・キャピタル」という観点から研究してはどうかとアドバイスしてくださり、人とのつながりから調査することにしました。

研究方法は4つを組み合わせることで多面的に考察を行いました。1つ目は、子ども食堂の責任者の方へのインタビュー。2つ目はドキュメント分析。3つ目は参与観察(調査者が被調査者集団の内部で長期にわたりその実態を多角的に観察すること)。4つ目は自身の回顧データに基づく分析。コロナの影響で食堂を開くことができなくなった時期もあり、参与観察の回数が減ってしまったため、自身の回顧データで補いました。調査の結果、子ども食堂は、親子にとって社会や地域との結びつきを支える仕組みとして機能していることがわかりました。

4年次の春学期に卒論にとりかかる際、参与観察のやり方やまとめ方について、どうしたらよいかと悩み、図書館のラーニングアドバイザーの先輩にオンラインで相談しました。ゼミの先生に相談する以外に図書館でもいろいろ調べたのですが、年齢も近く、参与観察を最近やったことがあるラーニングアドバイザーの方にアドバイスをもらえたことで、とても参考になり安心しました。

卒論完成にあたりゼミの先生は、学生の自主性を重んじながら、的確なアドバイスをくださったので、先行研究で明らかにされていない問いを自分で立て、データに基づいて論理的に思考するなど実力がつきました。大学4年間で学んだことの集大成として苦労した分、得るものも大きな体験でした。

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