座談会
清水淳弥 染谷彩乃 星野未羽 牧野弘喜
2025/04/10
在学生
OVERVIEW
あらゆる切り口で社会や文化にアプローチする、社会学部。
国内外の多彩なトピックに関する講義・演習科目では、
各専門分野の教員陣が、社会学の蓄積を解き明かしてくれます。
それぞれ進む道が決まった今、各学科のみなさんに
この4年間の学びや経験を振り返ってもらう座談会。
社会学部と社会学の魅力について、大いに語っていただきました。
星野
1年次の初めに「社会学原論1」を履修したとき、担当の先生にまず初めに「あなたにとっての社会学とは?」と聞かれたことを鮮明に覚えています。社会学の基本的な考え方や概念・調査方法について、これまでの偉大な社会学者の考え方を学び、社会学独自の思考法を身につけるための授業でした。高校生の感覚で社会科や歴史の延長上か、もしくは似たようなものかと思っていましたが、まったく別ものでした。
牧野
私は、ニュースで報道する社会問題を扱うのが社会学だと思っていました。抽象的でふんわりしたことを学ぶイメージでしたが、私も「社会学原論1」の中で「自殺論」を知ったとき、とても哲学的で驚きました。
また「基礎演習」では、いわゆる社会調査法を学び、本格的なヒアリング調査を行い、それに基づく分析など一連の流れを初めて体験しました。「アナウンサーの中のジェンダー」についての調査だったのですが、先生が、まったく何もやったことがない私たちに「思い切って自分たちで実際にやってみたら?」とまかせてくださり、立教OBの古舘伊知郎さんにアポをとってみたら快諾いただき、ヒアリングできたことが貴重な体験でした。
また「基礎演習」では、いわゆる社会調査法を学び、本格的なヒアリング調査を行い、それに基づく分析など一連の流れを初めて体験しました。「アナウンサーの中のジェンダー」についての調査だったのですが、先生が、まったく何もやったことがない私たちに「思い切って自分たちで実際にやってみたら?」とまかせてくださり、立教OBの古舘伊知郎さんにアポをとってみたら快諾いただき、ヒアリングできたことが貴重な体験でした。
染谷
私は、国際社会学のゼミに所属しています。調査でいえば、ゼミの3人のグループで、東南アジアの食文化をテーマに研究を行いました。私は夏季休暇を利用してタイとベトナムに行く予定があり、現地で4人の方に日本食のイメージについて聞きとり調査を行いました。あとのグループの2人は、それぞれ国内で4人ずつインタビューを行って分析した結果、日本食がグローバルな広がりを見せる一方で、現地の人々の好みの味に変化させた、味の現地化=グローカル化した日本食が認識されている可能性があると分かりました。
反対に、日本人は日本食をどのようにとらえているかにも興味を持ったので、卒論では10~80代の日本人の男女28名を対象に、3日分の食事の写真を撮影してもらって回収し、食事内容を分析しました。そして「若年層や中年層の方が高齢層よりもグローカル化が進行した食事をとっている。日本人は海外の食文化の影響を受けて変容し、グローカル化した日本食文化を受容してきた」という考察をしました。
反対に、日本人は日本食をどのようにとらえているかにも興味を持ったので、卒論では10~80代の日本人の男女28名を対象に、3日分の食事の写真を撮影してもらって回収し、食事内容を分析しました。そして「若年層や中年層の方が高齢層よりもグローカル化が進行した食事をとっている。日本人は海外の食文化の影響を受けて変容し、グローカル化した日本食文化を受容してきた」という考察をしました。
牧野
社会学といえば、フィールドワークも大きな魅力です。八王子・高尾山近くのアウトドアフィールドで、自然保護活動を行っている人の講義を受けました。八王子の生態系や自然保護体制についての話を聞きながら、みんなで木を切って薪を割り、焚き火をしたり、ご飯を食べて楽しみながら自然環境について学びました。
また、3年次の「専門演習1」では5人のグループで、大学のある豊島区で行っている「豊島区プロジェクト」について1年をかけて研究しました。大学周辺のフィールドに出かけて行き、地元住民や役所の方などにヒアリングを行いましたが、先行研究で文献などを事前に調べて知識を持って行っても、実際の現場へ行って話を聞くと感じることは違うと感じました。自分は現場に行くのが好きです。
また、3年次の「専門演習1」では5人のグループで、大学のある豊島区で行っている「豊島区プロジェクト」について1年をかけて研究しました。大学周辺のフィールドに出かけて行き、地元住民や役所の方などにヒアリングを行いましたが、先行研究で文献などを事前に調べて知識を持って行っても、実際の現場へ行って話を聞くと感じることは違うと感じました。自分は現場に行くのが好きです。
清水
調査のほかにも、文献を読んでディスカッションや発表を行う、レポートを書くなど経験を重ねるにつれて、物事をまとめる力が身につき「これが大学生か」と実感しました。ディスカッションを通じて他者の意見を聞き、多様な考え方を理解する機会を得たことで、視野が広がり、その後の生活にも役立ちました。1~2年次の授業を通じて「世の中すべての事象が社会学である」ということが理解できましたね。
苦労したことは、タイムマネジメントの面です。自分はフェンシング部に所属しています。10年以上遠ざかっていたリーグ戦1部昇格を果たし、全国大会にも行くことができたほどなので、練習量は多いと思います。部活動を夜に終えてからまた翌日の授業に出席するまで、課題をどう消化するか、高校生のときとは違って時間の使い方は苦心しました。
苦労したことは、タイムマネジメントの面です。自分はフェンシング部に所属しています。10年以上遠ざかっていたリーグ戦1部昇格を果たし、全国大会にも行くことができたほどなので、練習量は多いと思います。部活動を夜に終えてからまた翌日の授業に出席するまで、課題をどう消化するか、高校生のときとは違って時間の使い方は苦心しました。
星野
私の父は、世界を飛び回る仕事だったこともあり、幼いころから国際的な文化に興味があり国際社会コースに進みました。毎回授業の後半はすべて英語でのディスカッションになるのですが、私は帰国子女ではなく、長期留学の経験もないので、初めは英語の発音に自信がなく、発言を躊躇しがちでした。しかし、国際社会コースの科目は少人数制クラスであることや、正解のない社会学について、みんなで思考を深めるという意識がクラス全員にあったことで「発音よりも、自分の意見が大事!」と思えるようになり、その後は英語で積極的に意見を主張できるようになりました。
染谷
社会学部は、学生の「自分づくり」を全力でサポートしてくれますよね。先生方ばかりではなく、立教職員主催のイベントが多くて、私は東北被災地で行われた林業体験に参加しました。小学校低学年のときに起きた東日本大震災のことを、実感として知ることができましたし、森の壮大さを改めて感じました。こうした体験の積み重ねの機会として、スキルアップ講座、ボランティア、異文化交流など多様なプログラムを体験できる環境であることが、立教大学の魅力だと感じます。
星野
私は2年次で「Global Study Program in Sydney」という海外研修プログラムに参加しました。1ケ月間、英語の勉強とワークショップに明け暮れました。人生で初めて、中長期間日本を離れたことで、グローバルな視点から日本を見つめ直すことができました。初めて気がつく日本ならではのよさ、日本人としての誇りを持つことの大切さに気がついたのです。4年間を通して国際的なマクロ視点を身につけたことで、あらためて日本に目が向きました。その結果、今の当たり前の生活を支えたいと考え、就職は国内のインフラ業界を選択しました。「社会」を支える側の人間として、活躍していきたいと思っています。
清水
自分は高校生のころ、新聞記者の方の講演を聞いたことがきっかけで、マスコミ業界に進めたらいいなと、メディア社会学科に入学しました。大学では文章の書き方はもちろん、現役で活躍する業界の方々の話を聞くことができました。
そして私は、部活動を新座キャンパスで行うので、そこで「スポーツジャーナリズム」や「福祉環境論」など、他学部の授業を多く履修しました。それによって興味の幅を広げ、多角的な視点を養うことができました。とくにスポーツウエルネス学部の授業「スポーツジャーナリズム」では、実際に先生が取材される側だったので、取材を受ける側と行う側の視点を詳しく知ることができ、メディア社会学科での学びとリンクしてとても有意義でした。
記者として大手マスメディアに就職することに決まった今、迅速かつ正確な情報を提供し、社会問題やその背景にある課題を明らかにし、人々の声を伝え続ける人でありたいと考えています。
そして私は、部活動を新座キャンパスで行うので、そこで「スポーツジャーナリズム」や「福祉環境論」など、他学部の授業を多く履修しました。それによって興味の幅を広げ、多角的な視点を養うことができました。とくにスポーツウエルネス学部の授業「スポーツジャーナリズム」では、実際に先生が取材される側だったので、取材を受ける側と行う側の視点を詳しく知ることができ、メディア社会学科での学びとリンクしてとても有意義でした。
記者として大手マスメディアに就職することに決まった今、迅速かつ正確な情報を提供し、社会問題やその背景にある課題を明らかにし、人々の声を伝え続ける人でありたいと考えています。
牧野
2年次の春、私は将来を考えたとき、資格をとって弁護士になろうと一念発起しました。試験に合格すれば、社会学部からでも弁護士、裁判官、検察官の法曹3者になるための実務教育を行う法科大学院に進むことができるのですが、法律用語もよくわからないところから予備校へ通い、個人で司法試験の勉強を行い、社会学部の勉強との両立は大変でした。結果、試験に合格し、法科大学院既習コースへと進むことになりました。将来、法律家として法律だけを知っているよりも、社会学を知っていることは、人間としてひとつの魅力になると思います。社会情勢や社会的背景などにも目がきくほうが、会話をしていても人間力のある弁護士になれると思います。
染谷
そうですよね。私も社会学を学んで、相手のことを自分事としてとらえる姿勢が身につき、社会課題を解決したいという気持ちが強くなりました。卒業後は地元の市役所に勤務するのですが、例えば教育やイノベーションに関する部署で、自分が企画立案したプログラムを提供し、子どもたちの課題解決能力や主体性を育むことに携われたらいいなと思っています。また、この4年間で多角的視野を身につけることができたことは、老若男女や外国人、障がい者の方、生活困窮者などさまざまな人たちがやってくる市役所で、対応能力を発揮できるのではないかと自身に期待しています。
清水
ひとつの事象に対して広い視野で、しかもいろいろな見方ができるのが社会学ですよね。メディア社会学科に所属しながらも、教育や貧困、福祉や災害など興味関心を自分から広げて学ぶことができる環境が整っているからこそ、それが理解できました。
牧野
「わからない」「知らない」と、物事を単純に結論づけしなくなったのは、社会学を学んだからだと思います。すべてのことには背景や仕組みがあるんだろうなと。先日歯医者で、それまで治療費がかからなかった歯周病予防プログラムという診療を受けたら、急に1万円近くかかりました。それまでの自分だったら「今度からそうなったのか」で、終わるところでしたが「これは、実質的な健康保険料の値上げじゃないか?」と、気づけました。なんだか大人になったというか、成長したなと思いましたね。
星野
「当たり前を疑う」「すべてを疑う」という姿勢ですよね。そのままを受けとるのではなくて「本当にそうなの?」と追及していくプロセスの中で、社会が見えてきますよね。1年次の「社会学原論」で、先生が「この4年間できっと、あなたなりの社会学の定義ができるようになります」とおっしゃっていたのですが、実際に4年間向き合うことで「社会学とは、社会のあらゆることが学問の対象であり、現代社会で生きていくための学問」という私なりの定義を見出すことができました。
染谷
自分たちが利用していたファストファッションに関しても、流通経路や作っている人たちのことまで考えるようになりましたし、紛争や戦争について知ると「遠い国で起こっていること」と表面的に考えられなくなりました。「自分には関係ない」ことなどないんだろうなと感じます。
清水
大学生活では、単に知識を得るだけでなく、多様なバックボーンを持つ人たちとの交流を通じて、たくさんの刺激を受けることができました。また、社会学部は自由度が高く、私はこの環境でなければ部活との両立はできなかったと思います。面倒見のよい先生方、部活動の仲間たち、両親やコーチなどの支えがあって、この4年間で大きく成長できました。これらの経験は、一生の糧となり財産になると思います。